「戦争地帯」という言葉が飛び交う
アメリカでは「市民戦争」が始まったのではないか。
連日のように上空をヘリコプターが飛び交い、テレビをつければ、各地で警官とデモ隊が対立している光景が映し出されている。
私が住むカリフォルニア州サンタモニカでも、5月31日、大規模な抗議デモが起きた。デモ自体は平和的なものだったが、デモに乗じて、悪徳集団がショッピングモールや店で略奪行為を働いたり、器物破壊や放火を行なったりした。

今、こんな光景が、全米各地で展開されている。
ホワイトハウス前は特に悲惨な状況だ。警官が投げた催涙弾やペパースプレーから出た白煙が通り一面に広がり、そんな警官にデモ隊は投げられたペパースプレーを投げ返したり、花火を投げたりして応戦している。警官が放ったゴム弾を受け、負傷したと泣き喚く市民。全米で死傷者の数は増えて行く一方だ。
「抗議デモ」などという甘い表現で済む状況ではない。「暴動」も通り越し、ニュースでは「War Zone=戦争地帯」という声が飛び交うようになった。
事の発端は、今、世界中で大きな波紋を呼んでいる、ミネソタ州ミネアポリスで起きた黒人暴行死事件である。白人警官に膝で首を押さえつけられて亡くなった黒人男性ジョージ・フロイドさんの動画は目を覆いたくなるほど痛ましい。動画の時間は8分46秒。白人警官はフロイドさんの動きが止まり、声を発しなくなった後も、さらに3分間も首を押さえ続けたのだ。悪意があったとしか思えない。
膝で首を押さえたのはデレク・ショビン。ショビン以外に、現場には3人の警官がいたが、彼らもショビンの行為を止めに入ることはなかった。
「息ができない、ママ」
脈拍が失われていく中、フロイドさんは最期に母を思った。