科学的根拠なく、「放牧は非衛生」の発想
佐藤東北大名誉教授は「ワクチン接種済みの豚の放牧を中止させる科学的根拠はありません。しかも放牧農場では、外柵から5メートル離れた所に内柵を設けている。舎飼いと同様の防御措置をしているのに、感染リスクは放牧がより高いという科学的データはなく、野鳥による感染の可能性というだけで放牧を中止させることは許されない。放牧を一律に非衛生的とみる発想が透けて見える」と批判する。
またCSF感染発生の58例のうち2例以外はすべて畜舎飼いだった。しかもその2例は二重柵になっておらず、感染原因は、飼料として与えていたウイルス混入の非加熱の食品残さの可能性が指摘されている。
「コロナ」理由にこっそり改正案
そもそも放牧中止に関しては、当事者らに知らされないまま、唐突に出てきた感がぬぐえない。
基準改正の「検討すべき要点」として、農水省審議会の牛豚等疾病小委員会で提案されたのが、20年4月28日。ところが、この日の議事録は、農水省が「新型コロナウイルス感染」を理由に持ち回り(メール、電話による委員への意見聴取で非公開)で行ったため、議事録が作られていない。