トランプ政権下でも、米中摩擦が冷戦にはつながらない2つの理由

これから世界をリードするのはどこ?

ブレグジット後のEUはどうなる?

EUに目を向けると、連合王国のEU離脱問題、いわゆるブレグジットがあります。2020年1月に連合王国はEUから離脱しました。しかし、ほとんどすべてのエコノミストが残留したケースに比べGDPは確実に小さくなるとの予測を立てています。

経済合理性から考えれば、EUに残ったほうが得なのは明らかです。

しかし誇り高い連合王国の人々が、「なぜブリュッセルのEU官僚の言いなりにならなければいけないのだ」とジョンブル魂を発揮してしまったわけです。

僕は50年単位でみたら連合王国はEUに戻ると思っていますなぜなら、連合王国は大陸との交易で豊かになってきた歴史を持っているからです。離脱したら損をするからです。どんな国であっても長期的に見たら、わざわざ貧しくなる道は選びません。

EUはいろいろな要因で揺れはするものの、バラバラになることはないでしょう。

EUの根幹は独仏同盟です。フランスのド・ゴール大統領と西ドイツのアデナウアー首相胸襟を開いて話し合い、調印したエリゼ条約が元になっています。

「俺たちは普仏戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦とこの100年間に3回殴り合った。死力を尽くして戦った結果、俺たち欧州勢の力は低下し、遠くのソ連とアメリカが大きな顔をするようになった。戦って誰が得をしたかといえばソ連とアメリカだ。こんな馬鹿馬鹿しいことはないので、これからは仲良くして、もうこれ以上よその奴らに大きな顔をさせるのはやめよう」

2人が話し合って締結したエリゼ条約の趣旨はこのようなものです。

さらに2019年、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相はアーヘン条約に調印し、エリゼ条約をさらに強化しました。

独仏関係が安泰である限り、EUはびくともしないでしょう。なぜならEUがバラバラになると、得をするのはEU以外の国であることを独仏首脳はよくわかっているからです。

EUの根幹は独仏関係にある(photo by gettyimages)

世界の命運を握るのはアフリカ

新興諸国に目を向けると、これから注目すべき地域はアフリカです。あと30年くらいでアフリカの人口はアジアの人口とほぼ一緒になると予測されています。

アフリカで一番の人口大国であるナイジェリアがイスラム過激派との間で内戦状態になっているなど心配な要素や課題は多々ありますが、今後はアフリカの国々の成長と安定が国際的に見て極めて重要なイシューであり、長い目で見るとアフリカがいかにサステイナブルに発展していくかが世界の命運を握ると思います。

中国はかなり以前からアフリカを重視し、進出のためにさまざまな手を打っています。それは深刻な摩擦も引き起こしていますが、中国が国家百年の計に立ち長期的な視点を持っていることの現れでしょう。

アフリカ以外の地域では、アジアではインド、パキスタン、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムなどで人口の増加が目立ちます。それらの多くはイスラム圏です。

南米も人口が増加します。これから世界を牽引するのは、アフリカとこうした地域になるでしょう。人口はAIやIoTの時代になっても、なお力のバロメーターなのです。

一方、日本では人口が減少していきます。人口が減って栄えた国や地域はありません。「次世代のために生きる」という視点からも、この問題については官民をあげて真剣に取り組んでいく必要があります。