NHKの国際情報番組『これでわかった! 世界のいま』が7日、白人と黒人の格差について説明するアニメを番組内で流し、その後、公式ツイッターにて投稿すると、人種差別的だと大きな批判を集めた。

同アニメは海外メディアでも取り上げられ、ジョセフ・M・ヤング駐日米国臨時代理大使が、「この動画ではもっと多くの考察と注意が払われるべきでした。使われたアニメは侮辱的で無神経です」と自身のツイッターアカウントで批判するにまで至っている。
米国の複雑な人種問題に焦点をあてようとする @NHK の意図は理解していますが、この動画ではもっと多くの考察と注意が払われるべきでした。使われたアニメは侮辱的で無神経です。 https://t.co/y3s4pSAenz
— ジョセフ・M・ヤング 駐日米国臨時代理大使 (@USAmbJapan) June 9, 2020
事態を受け、NHKは9日に謝罪の文書を発表。その中の「配慮が欠け、不快な思いをされた方にお詫びします」という文面が、「問題なのは不快なことではない」と火に油を注いでいる。
今回のNHKの動画は海外でどのように捉えられているのか、メディアが指摘しているポイントをニューヨークに在住経験のある筆者が解説したい。
黒人の「人種ステレオタイプ」の寄せ集め
問題のアニメは、先日のジョージ・フロイド事件が発端となり全米に広がった抗議デモ「Black Lives Matter」を解説するためのものだ。そもそも発端となった事件やBLM運動に一切触れていないということが何よりも問題だが、それ以外にもいくつかのポイントをアメリカのメディアは指摘している。
1つ目が、「人種ステレオタイプ」。主役男性のムキムキマッチョな肉体、ドスの効いた声、知的でない話し方……これらは「大きくて怖い」「ドラッグ・ディーラー」「失業者」といった黒人男性の人種ステレオタイプを寄せ集めたようだ。また、財布をギューっと握りしめて「お金がないから怒っている」といった動作からは、この男性が今にも強盗を働きそうな印象を与える。
最悪なのは、アメリカのニュースメディア「ハリウッド・リポーター」が、このがま口財布を「女物のバッグ」と表現していることだ。どうやら、外国人の目にはそのように見えるらしい。大きな黒人男性が自分の持ち物ではなさそうな女性物のバッグを片手にお金がないと怒り狂う……どう見ても「犯罪者」だ。
さらに、燃える道路や車を背景に、拳を突き出して地面を踏み鳴らし怒り狂う黒人男女のうちのひとりの男性は、スタンガンを持っているようにも見える。これでは黒人を暴力に結びつけてしまう。
同アニメが転載されたYoutubeのコメント欄に、日本人からと思える興味深い投稿があった。「このステレオタイプはハリウッド映画やミュージックビデオからきたのでは?」というもので、的を得ているように思う。
人種ステレオタイプの形成には、メディアが大きな役割を果たしてきた。