なぜ若者は、それでも「安倍晋三」を支持するのか

「批判する奴は陰キャ」という暗黙の認識
御田寺 圭 プロフィール

安倍晋三は「かわいいおじさん」

テレビのワイドショーやツイッターなどを観測していると、安倍政権を支持しているのはもはや狭量で盲信的なネット右翼だけ――という認識を抱いてしまいそうになる。しかし、こうしたメディアの主な利用者である中高年層にはまったく理解しがたい光景が、多くの若年ユーザーを抱えるタイプのSNS、例えばTikTokでは広がっている。ツイッターで「安倍晋三」と検索すると、上位に表示されるのは軒並み安倍批判、政権批判のツイートだ。しかしTikTokではそうではない。

現代ビジネスの主要な読者層も40代以上の中高年層と聞いているので、にわかには信じがたいかもしれない。もしスマホにTikTokが入っているなら、試しに「安倍総理」とか「安倍晋三」と検索して確かめていただきたい。

そこには「ゆるふわ系おじさん」としてちやほやされ、親しみをもって「イジられる」内閣総理大臣の姿があるはずだ。

「安倍さんに会ってハイタッチしてくれた!」と喜ぶ動画、自作の「アベノマスクのキャラ弁」を紹介する動画、会見する安倍総理の顔をアプリを使って「かわいく」加工した動画――これらが多いもので20万件以上の「いいね!」を獲得している。寄せられるコメントも、批判的なものは極めて少なく、「親近感が湧いた」「かわいい」「応援してます」というような、肯定的なメッセージが多く目につく。

 

どうやら、若年層からの「安倍支持」や「安倍人気」のニュアンスは、他の世代とは相当に異なっているようだ。若者たちの間では、安倍総理は「この国の頼もしいリーダー」「反対勢力を退け、諸外国に毅然と対応する右派政治家」として人気があるわけではない。その容姿や、プライベートで時折見せるような「天然」的なふるまいも相まって、「かわいいおじさん」という文脈において人気を博しているのだ。

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