なぜ若者は、それでも「安倍晋三」を支持するのか

「批判する奴は陰キャ」という暗黙の認識
御田寺 圭 プロフィール

「仲間内の安定」が第一

若者は安倍総理個人だけではなく、政党としても自民党を支持する傾向が強い。

彼らの多くは「マイクロ共同体主義」とでもいうべき人生観を持つ。すなわち「自分と自分の仲間内だけがうまくいけばそれでよい」という最適化戦略を取っているのだ。自民党が推進する「自己責任」の規範を内面化しつつ、新自由主義的な社会を生き抜いていかねばならないという文脈で、少なくとも社会的・経済的には「現状維持」を提供してくれそうな政党として、彼らは消極的に自民党を選好している。

 

もちろん、安倍政権や自民党が、どちらかといえば富裕層に有利で貧困層にはめっぽう厳しい政治をしていることや、将来世代(つまり自分たち)に経済政策や社会保障の失策によって生じたツケを回そうとしていることも、若者たちは承知している。

しかし、だからといって若者たちが野党を支持するようなことはない。「かりに自分たちがデモなどで政治的に抗議しても、自民党はそうした政策をやめないだろうし、どうせ野党は勝てないだろう。そんなことに自分たちの時間や労力といった貴重なリソースを割くくらいなら、せめて自分や家族や仲間くらいは、この冷酷な社会を生き抜けるように、足場を固めることを優先して行動する」と考えているのだ。

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自民党の自己責任論的なポリシーと「自分と自分の仲間内だけで活路を見出していく」というマイクロ共同体主義的な時代精神の利害が図らずも一致している。その意味では、しばしば若者たちにとって自民党は「リベラル」な政党と映り、こうした社会規範や時代の方向性に批判的な態度を取る野党側の方が、むしろ「保守」として見えてしまうことすらある*3

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