日本への憧れは強くなっている
私は幼少期をフランスで過ごし、その後、日本で大学・大学院を出た後、再びフランスに帰ってきた。二度目のフランス生活はもう7年になるが、そんな中で近年、フランス人の日本への憧れはどんどん強くなっていることを実感する。
同時に人々の生活の中にもかなり日本の文化が浸透してきた。日本語学習者でなくても、日本について何かと詳しい人が増えたのも確かだ。それには文学や映画が大きな役割を果たしているし(たとえば村上春樹は本当に多くの人が知っている作家だし、是枝監督はカンヌ映画祭でパルム・ドールを取る前から人気の監督だった)、和食ももはやブームどころかすっかりフランス人の生活に定着したと感じる。豆腐や味噌が家の近くのごく普通のスーパーに並んでいるくらいだ。
私の友人にも、仕事ではなくあくまで観光で、ほぼ毎年日本へ行っているという人や、もう10回以上日本に行ったなんていう人もいる。ある統計によれば、2015〜2016年の1年間を取って見ると、海外へ行くフランス人観光客が選ぶ目的地のなかで増加率が1位だったのは日本だそうだ。
日本のイメージというのは近年、本当に大きく変わってきた。私の個人的な経験からではあるが、まずはそのイメージの変遷をたどってみたい。

日本のイメージの変遷
私が初めてフランスへやってきたのは1990年代の終わり。パリの現地の中学校に編入した。ある日、クラスの男の子がちょっと真面目な顔をして、「日本では生のお魚を食べるんだって?」と聞いてきた。その子が発した「生魚」という意味のフランス語の「poisson cru ポワッソン クリュ」はフランス語に馴染んだ耳には、顔をしかめたくなる響きを持っている。当時はまだ「刺身」と「生魚」の違いを説明するほどの語学力のなかった私は悶々としたことを覚えている。