2020.06.25
# フランス

「日本に憧れる」フランス人が増加中…でも、そのウラで起きていること

「アジアの一員」としての日本
大野 舞 プロフィール

誰もが日本に住んだことがあるわけでもなく、どんなに情報量が増えたとしても、地理的には極東にある遠い国のこと。だからこうしてざっくりとアジアというイメージがあるのは、よく考えてみれば当たり前のことなのだと私も改めて気づかされた。

〔PHOTO〕iStock
 

アジアにおける日本

このように、日本から遠く離れた人々の日常生活の中では日本は立派にアジアの一員として見られている。そもそもイメージなのだからざっくりとしたことであるのは当たり前だ。しかしそのようなざっくりとした眼差しを受け止めた上で改めて自己を振り返ってみるのも面白いのではないだろうか。

フランスではアジア系とみられる日本人だが、自分たちがアジア人であるという意識が薄いというのはよく聞く話だ。

内閣府が行なっている世論調査に、世界のどの国に親近感を感じるかを問うものがある。2019年の調査では、たとえば「中国に親しみを感じるか」を聞いたところ、「親しみを感じる」とする人の割合が22.7%、「親しみを感じない」とする人の割合が74.9%という結果だったという。それに対し、アメリカに「親しみを感じる」とする人の割合は78.7%、「親しみを感じない」とする人の割合が19.1%という結果がある。

同様に、韓国に対しても、「親しみを感じる」という回答者は26.7%に対し、「親しみを感じない」とする者の割合の方が高く、71.5%だった。一方でヨーロッパに対する親近感は安定して高く、65%を上回っているのだ。

評論家の松本健一氏は、西欧を追いかけることにアイデンティティを見出していた日本人は1964年の東京オリンピックを境に、西欧化つまり近代化を成し遂げたと感じるようになり、同時に自らを「アジア人」とみなさなくなったという。実際に上記の意識調査を踏まえても、日本人がどちらの方角を見ているのかは明らかだろう。

「日本人論」再考』を著した船曳健夫氏は、「西洋以外の社会として、最も早く近代化を果たし」た日本は、自らを「対西洋」という枠組みの中で定義してきたという。さらに船曳氏は「西洋の地域的歴史に属さない社会であるがため、近代化に成功しても失敗しても、自らの正当性を疑い、アイデンティティの不安を説明する「日本人論」を必要としてきた」のが日本だと指摘している。

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