久美子社長の「退職金」
それはどういうことか。
大塚家具は、今年の2月に棚卸評価損を約19億円発生させています。ヤマダ電機の会計方針に合わせることで処理方法が変わったことによるとはいえ、売上350億円弱、営業赤字76億円で経営危機が毎日のように騒がれる大塚家具にとってはずいぶんと厳しい処理です。
棚卸評価損は、将来に損失を繰り延べしないための処理ですから、苦しい時期にあえて膿を出し切り、リスタートを図ろうとしているのかもしれません。
そしてリスタートするからには、新規顧客を開拓しなければならない。今は、大塚家具で良質な家具を買うよりも、ニトリでコスパのいい家具を買うほうが「買い物上手」「普通」と捉える人が多い時代になってきています。これからの景気動向がどう変化するかますますわからないタイミングですから、「ヤマダ家具」も同様の路線を取ることになるのかもしれません。
結局のところ、上場企業は結局のところあまりガバナンスは利きませんので、結果を出せなくとも経営者は居座れます。ただ、所有と経営が分離されている非上場企業のガバナンスは冷酷なものです。
著者の親友は雇われ経営者としてのべ10期以上にわたって一度も業績を落としたことはなく、昨年より投資ファンドが買収した非上場企業の社長をしていました。ところがコロナショックがとどめを刺す形になり、業績を上げられなかった責任を取って1期で退任させられていました。役員退職慰労金も当然ゼロです。
大塚家具の貸借対照表には、役員退職慰労金が5,000万円積みあがっています。これが、大塚久美子社長の「退職金」の原資になります。就任以来一度も業績を上げることなく、底の抜けたバケツのように会社のキャッシュを減らし続け、ついには屋号すらも失う一歩手前です。そんな経営者が退職金を受け取れるのであれば、恵まれすぎた最後と言ってもいいでしょう。
今後、沈みかけた巨船となった大塚家具をヤマダ電機がどう舵取っていくのか、引き続き注視していきたいと思います。