弁護士が見た、地下アイドル業界の闇…どこの事務所もブラックすぎる

ファンに夢を与える仕事のはずが…
深井 剛志 プロフィール

これらは書籍の中でも触れた通り、アイドル側に非常に不利益な条項であり、民法に照らし合わせても契約としての拘束力を有しない可能性が非常に高いです。現に恋愛禁止条項を破った場合に損害賠償できるという規定や、2年間の活動禁止規定などは、実際の裁判でも「契約としての拘束力を有しない」との判決が出ています。

そのため私は、これら違法の可能性が高い条項を削除するよう事務所に要求しました。しかしながら、事務所側は契約書の修正に応じる姿勢を全く見せず「他のアイドルもみんなこの条項で契約している」「不服があるのなら契約しなくてよい」「裁判で争っても構わない」などと言われてしまいました。

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私も当事者のAとかなり話し合ったのですが、やはり彼女は事務所に逆らって新たな契約を結べないという事態は避けたいと考え、やむを得ず向こうが提示した自分に不利な契約書にサインすることになりました。

法律に基づき、違法の恐れがある契約書の条項を指摘しているにもかかわらず、全く対応しようとしない態度は非常に問題があります。

給料は月2万円の「チェキバック」のみ

アイドルが事務所との間で結ぶ契約書には、報酬の規定が存在します。しかしその場合であっても、「支払う報酬は、チェキ(=アイドルとの有料写真撮影)で得られた売り上げの半額のみとする」と、いわゆる「チェキバック」しかないと明記されてあったり、さらにひどいものだと「支払う報酬の割合は事務所側が決める」と、明確な基準が記載されていない契約書もあります。

1ヵ月に撮れるチェキが数十枚という地下アイドルの方も多く、そのような場合、月にもらえる報酬額は1万~2万円程度にしかならないこともあります。

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