現代は、未来を予測することが難しい時代(VUCAの時代)と言われています。近年デジタル化によって変化しつつあった私たちの生活様式や価値観は、新型コロナウィルスの世界的流行により決定的に変容しました。このような時代に、ビジネスで求められる能力とはどのような能力なのでしょうか。
『具体と抽象』などの著作で若手経営者から熱烈な支持を集めるコンサルタント・細谷功氏は、すでにある問題を解く「問題解決力」ではなく、「どこに問題があるのか」を探す「問題発見力」こそ、不確実な時代に必要なものであると説きます。
細谷氏による現代新書の近刊『問題発見力を鍛える』から、前書きを紹介します。
『具体と抽象』などの著作で若手経営者から熱烈な支持を集めるコンサルタント・細谷功氏は、すでにある問題を解く「問題解決力」ではなく、「どこに問題があるのか」を探す「問題発見力」こそ、不確実な時代に必要なものであると説きます。
細谷氏による現代新書の近刊『問題発見力を鍛える』から、前書きを紹介します。
コロナ×デジタル化で一気に変わるビジネス
一連の新型コロナウィルスに関する問題は私たちの根本的な価値観や行動様式を一変させました。
物理空間からバーチャル空間へ、人間同士の密な関係を疎な関係へ、シェアリングエコノミーを「他人が触ったものは極力触らないようにする」といった形へと大きく変えつつあります。
ウィルスの拡大防止の上で「諸悪の根源」とされた「三密」(密閉、密集、密接)。その忌避は、ある意味で人類が推進してきた生活様式を真っ向から否定するものでした。

2020年7月現在で、一部で収束しつつある新型コロナ問題はこのような振り子の振れを再度元の方向に戻す動きもあるものの、完全に元に戻るところまではいかないでしょう。
都市化による密集や、オフィスワーク、お店での飲食や会話による密接という行動様式は完全に破壊されてしまったとも言えます。
このような衝撃は戦争や自然災害など、局地的には数年に一度といった形で起こっていました。これまでの歴史上の疫病に関しても世界の大部分に波及したものはあったかも知れませんが、ここまで世界同時発生的に人々の価値観を一斉に変えてしまったものはなかったといってもよいでしょう。
これを加速したのがグローバル化とデジタル化の進展でした。
特にデジタル化は新型コロナ騒動の前に急激に進展していたもので、たとえばスマートフォンの普及は、本や音楽、ゲームはもとより、旅行代理店にカメラや電話といった「ありとあらゆるもの」をデジタル化し、それがビジネスの特性を根本から見直させる動きとなりました。