新型コロナの影響で注目を集めている「マッチングアプリ」。スマホ一つで新たな出会いを探せるため、婚活の主流となりつつあります。
FRaU webでは、実際の取材に基づいた「アプリ婚活」のリアルを、共著作家の山本理沙さんと安本由佳さんによってノンフィクション小説としてお届け。アプリの「モテ技」テクニックも満載です。
主人公はコロナ禍で孤独を極め、本気でアプリ婚活を始めたアラサー男女。「結婚」や「幸せ」について見つめ直しながら、果たして二人はベストパートナーにたどり着けるのでしょうか?
【これまでのあらすじ】
結婚に焦り始めた武田留美はマッチングアプリを始めたが、スペックだけで選んだ億男のモラハラ発言に恐怖を覚える。その後あえて不器用な商社マン・直彦をデートに誘うも、口論となってしまった。
結婚に焦り始めた武田留美はマッチングアプリを始めたが、スペックだけで選んだ億男のモラハラ発言に恐怖を覚える。その後あえて不器用な商社マン・直彦をデートに誘うも、口論となってしまった。
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自己嫌悪の夜
――疲れた。
シャワーを浴びてソファに倒れ込んだ留美は、ぼんやりとテレビに向かった。
普段はお笑い番組なんて全く興味はないが、今夜はなぜだか、男芸人の下品な笑い声に少しばかり心が落ち着く。
――私って、ほんと嫌な女......。
全身をフル活用して笑いを表現する芸人を眺めながら、留美は自己嫌悪に襲われる。
世の中にはこうして捨て身で人を笑わせようと全力を注ぐ人間もいるのに、自分はあの純朴そうな若い商社マンを傷つけてしまったのだ。
痛々しく揺れた直彦の澄んだ瞳が、瞼にこびりついて離れない。
――もう忘れよう。所詮、アプリで一度会っただけの男よ。
しかし留美が無意識にスマホを手に取ると、そこには『ナオ29歳』から謝罪メールが届いていた。