25年間の洗脳生活
今から2年前のことなのだが、突然「サンマさんの『ホンマでっかTV』から出演しませんか?」とオファーがやってきた。なんでもドン底人生を経験したパネルの一人として私の体験談を語ってほしい、と。どうやら7年前に私が執筆した『ドアの向こうのカルト』(河出書房新社)を読んでとのことらしい。
あのサンマさんを生でみられる! と思いスタジオのセットに入ったら吹いてしまった。自分の座る場所に「洗脳評論家」というプレートがおいてあったからだ。なんともものものしい肩書きかと思ったが、撮影収録はたのしくあっという間に終了。
放送をみたら、そのコーナーの中で5人のパネリストがいたにも拘らず、私のカルト体験談トークが半分を占めて盛り上がっていた。
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エホバの証人の信者として育った私は、子供の時から「ハルマゲドンが来るから大学にいかないで布教活動をしろ」と教えられてきた。
現在、私、佐藤典雅(現48歳)は川崎市で発達障害に関わる福祉の運営に携わっている。約5年前に自閉症である息子の楽音(がくと・現19歳)のために、放課後等デイサービス(以下、放課後デイ)を始めたのだ。放課後に発達障害児童を預かる学童みたいな福祉施設である。それから息子の成長に従って自前で高校、就労支援、グループホーム(知的障害の共同生活)をつくってきた。
福祉の世界に入る前はヤフージャパンにおり、その後に東京ガールズコレクション(以降、TGC)のプロデューサーとして仕事をしていた。当時の私からしたら将来自分が福祉業界に入るなんて夢にも思った。
しかしもっと話を巻き戻せば、小学生の自分が将来カルト教団に巻き込まれるなんて想像もしていなかった。さらにいえば、25年間の洗脳生活の後に親族ごと脱退できる日がくるとも思っていなかった。つくづく思うのだが人生なんて予想外・想定外の連続である。