2020.08.15

マイノリティが日々傷ついている「無意識の差別」の正体

「マイクロアグレッション」とは何か?
丸一 俊介 プロフィール

マイクロアグレッションの「健康被害」

このようなマイクロアグレッションは被害者に大きな健康被害をもたらします。日常的に繰り返され累積し、ヘイトスピーチやヘイトクライムなどと共鳴しあいながら被害者に大きな健康被害をもたらすことが明らかになってきているのです。

例えば、不安症状やうつ症状をもたらすリスクがあること、心臓疾患や記憶力の低下などとも関連性があるとされています(前出のスー教授の研究を参照)。また被害者は混乱状態に置かれるため、その回復に大きなエネルギーを必要とし、学業や仕事のパフォーマンスが大きく下がると指摘されています。

心理学の実験によれば、マイクロアグレッションを体験した被害者は簡単な記憶力や集中力を測るテストの成績が何もなかった時と比べて目に見えて低下しました。しかもその実験によれば露骨な差別を体験した時以上に、一見判別しにくいマイクロアグレッションを体験した時の方がより成績が低下したと言います。

こうした実験から、日常的にマイクロアグレッションにさらされることで、マイノリティは本来の力が発揮できず、より不安でパワーレスな状態に置かれてしまうと言えます。

 

マイクロアグレッションと憎悪のピラミッド

もう一つのマイクロアグレッションの問題は、それがBLMのきっかけとなった「暴行死」や特定の民族を対象とした犯罪(ヘイトクライム)とつながっていることです。これは憎悪のピラミッドと言われる図です。

(金友子「マイクロアグレッション概念の射程」より引用)

例えば、フロイドさんの暴行死事件やヘイトクライムは上から2段目の「暴力行為」に該当しますが、それはその下3段目のヘイトスピーチなどの「差別行為」を土台とします。その「差別行為」は4段目「偏見による行為」(ネット上の民族差別や「犯罪者」デマなど)から発生します。

4~5段目に該当するマイクロアグレッションなど一見「些細」に見えることが足がかりとなって、より暴力的な差別行為が発生し、最終的には意図的な民族の抹殺やジェノサイドに行きつくということを示しています。逆に言えば、センセーショナルな事件を問題にするのであれば、その土台となる日常をこそ変えていかなければならない、ということを示しているのです。

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