ちなみに、「歴史修正主義」というと、“世界の眼”からすれば、安倍晋三首相も立派な歴史修正主義者だ。世界的には「慰安婦の強制連行」は史実として認識されているが、それを否定する安倍首相の「強制連行はなかった」とする見方は、歴史修正主義だとして欧米のメディアから批判されてきた。
日本としては「負の歴史」を修正することで、かつての過ちをなかったことにしたいのだろうが、一方でアメリカの「原爆は必要なかった論」は、同じ歴史修正主義でも、原爆投下という「負の歴史」を「必要だった」と正当化してきた史実を否定しているのであるから、アメリカの過ちを認めるような「歴史修正」といえる。
ソ連参戦という要因
原爆でないなら、何が戦争を終結させるのに必要だったのか?
ロサンゼルス・タイムズに論説文を寄稿した歴史家たち(下記に登場)によると、それは、8月6日の広島への原爆投下と8月9日の長崎への原爆投下の間に起きた、ソ連参戦だったという(8月9日午前0時に開始)。

例えば、2016年、映画プロデューサーのオリバー・ストーン氏とアメリカン大学歴史学教授のピーター・クズニック氏は「広島原爆は世界を変えたが、第二次大戦を終わらせはしなかった」と題するの論説文を同紙に掲載して、終結させたのは原爆投下ではなくソ連の参戦だったと訴えた。
そして今年も同紙は、歴史家のガー・アルペロビッツ氏とジョージ・メイソン大学教授のマーティン・シャーウィン氏による「アメリカの指導者は戦争に勝つために、日本に原爆を落とす必要はないことがわかっていた。それもかかわらず、アメリカは落とした」と題した論説文で、ソ連の参戦が戦争を終わらせたとする両氏の主張を紹介した。
そう主張する理由として、歴史家らはいくつかの史実を紹介している。
例えば、ポツダム宣言受諾前日の1945年8月13日に、当時首相だった鈴木貫太郎が「ソ連は満州、韓国、樺太だけではなく北海道もとるだろう。それは日本の基盤を破壊することになる。アメリカと交渉できる時に戦争を終えなければならない」と訴えたことだ。