2020.08.16
# アメリカ

日本への原爆投下は必要なかった…アメリカで急拡大する「新たな考え方」

それは「歴史修正主義」と言われている
飯塚 真紀子 プロフィール

原爆投下前、アイゼンハワーもポツダムでこう話している。

「日本は降伏する準備をしている。あの恐ろしいもので攻撃する必要はない」

一部の歴史家ら(彼らは「歴史修正主義者」とレッテルを貼られているわけだが)は、「トルーマンはソ連の参戦が戦争を終結させることがわかっていた。しかし、彼は原爆を使う決意をした」とトルーマンの判断に疑問を投げかけているのだ。

 

天皇をめぐる、アメリカ国内の対立

ところで、彼らはまた「トルーマンが早い段階で天皇制存続を日本に確約していたら、日本は降伏していたはずだ」とも主張している。こうした見方には、従来アメリカで罷り通ってきた、「原爆投下まで、天皇は降伏するかどうか決めかねていた」という歴史を修正する見方だと反発する歴史家もいる。

昭和天皇(1940年)〔PHOTO〕Gettyimages

米紙ニューヨーク・タイムズは、その天皇制存続をめぐって、当時、共和党と民主党ニューディール派の間で起きていたイデオロギーの対立について記した新著「“Unconditional : The Japanese Surrender in World War II” (無条件:第二次大戦での日本の降伏)」(ビラノバ大歴史学部長マーク・ガリチオ教授著)を紹介している。

同著によると、トルーマンは、日本に無条件降伏を突きつければ、ソ連を連合国側の味方につけ続けられるし、アメリカ人有権者や兵士に自分たちが払った犠牲が報われたと確信させられると信じていた。トルーマンのゴールは敵軍を武装解除させて民主主義を確立することだった。そして、独裁者を否定すること(日本の場合、天皇制を廃止すること)によってしか、ドイツと日本を完全に再構築することができないと考えていたという。トルーマンは天皇制の廃止を強烈に求めていたわけだ。

しかし、トルーマンは、フーヴァー元大統領や、タイム社を設立して「タイム」「ライフ」「フォーチュン」などを創刊した米雑誌界の大物ヘンリー・ルースなど、いわゆる米保守派である共和党の大物たちの強い反対にあった。

米共和党の大物たちがトルーマンに反対したのは、彼らが天皇制存続という、日本に尊厳を与えるやり方で戦争を終わらせれば、これ以上戦死者を出さずにすむし、そのうえ日本をアメリカの言いなりにすることで、ソ連のアジアに対する野望を封じ込めることもできると考えていたからだ。

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