そして、そんな考え方の背後には、日本の国際派知識人たちの存在があったとガリチオ氏は指摘している。
「ガリチオ氏は、日本に融和的な米国務省の知日派は、“天皇は、アメリカが東アジアに安定した反共産体制を構築するのを助ける進歩主義者だ”と主張する“日本の国際的日本人のカモ”だったと描き出している」
と同紙は評している。
しかし、そんな米保守派について、民主党ニューディール派は「保守派は日本について自分たちが無知なことがわかっていないのだ」と考えていた。
つまり、東アジアでのソ連の覇権拡大を抑制するために天皇制存続を主張した米保守派の共和党と、天皇を退位させて政治文化を転換させることによってのみ、日本は平和な戦後国際社会の一員になれると主張する民主党ニューディール派の対立の構図があったのである。
日本は5月に降伏していたはずだ…
ソ連の脅威に向き合うことより日本の封建制度を破壊することを重視していた民主党ニューディール派を、米保守派は、“共産主義シンパ”とみなした。米保守派は「天皇は反軍国主義である」と誇張することでトルーマンに翻意を促し、ソ連の力が東アジアに及ばないようにしたかったのだという。つまり、米保守派は、それまで政権を支配していた天皇=独裁者という考え方を、天皇=反軍国主義者と修正することで、ソ連を牽制しようとしていたことがうかがえる。
ちなみに、対日強硬論を主張していたリベラルな民主党ニューディール派は、のちに新保守主義(ネオコン)の前兆的な存在となり、反対に、天皇=反軍国主義者と修正した米保守派は新左翼に取って変わられたとガチリオ氏が指摘している点も興味深い。