ファーストリテイリングの正社員は15年度でも最低321万円からのスタートだったから、店舗の非正規雇用販売員も正社員勤務時間換算した平均値と推計する。ユナイテッドアローズの人件費は平均年齢の高さ(32.0才)も押し上げている。平均的な販売員の年収は270万円前後、大手チェーンでも300〜310万円、高額なセレクトショップやブランドショップでもせいぜい400万円までというのが現実のようだ。
加えて、完全貸与制の外資高級ブランドを除けば、試着販売用の自社ブランド服を社販割引で購入する負担もある。低価格ブランドの10%〜20%引きからセレクトショップの40〜60%引き、高額ブランドの60〜80%引きまで、価格が高くなるほど割引率もエスカレートするが、販売員の負担額は名目月給の1割以上にもなる。
それを丸々負担しては生活もできないから、一月も着て用済みになればメルカリなどで換金する販売員が多い(※アパレル販売員の社販購入の詳細については『小島健輔が指摘 アパレルの「社販割引」がヤバイこれだけの理由』を参照されたい)。

どうして販売員の給与は「安い」のか
販売員の給与の低さは生産性(一人当たり売上、正確には一人当たり粗利益高)の低さが要因だが、どうして生産性が低いのだろうか。販売員の業務の実態を知れば容易に理解できる。
販売員の業務は「接客販売」だと思われるかも知れないが、総労働時間に占める「接客販売」時間は高級ブランドやプレタ、オーダーなどでは20%前後を占めても一般には10%弱で、セルフ販売の大型店では5%にも届かない。あっても「売場案内」や「在庫探し」で、「コーディネイト」や「フィッティング」は極めて限られる。
最も多いのは「品出し・補充」や「陳列整理」などの「マテハン」業務(マテリアル・ハンドリング;店内物流作業)で、総労働時間の3〜4割を占める。有り体に言えば物流業務であり、販売員の時給単価が物流倉庫の時給単価とニアイコールになってしまう要因と考えられる。