こうした価値観の刷り込みは、ホモソーシャルの空気に入れない異性愛者の男性をも苦しめている。

現に、かつて上司から風俗に誘われたとき、僕の他にも男性の同僚がおり(異性愛者の同僚だった)、彼は非常に苦々しい表情をしていた。結局、僕は上司からイヤミを言われながらも誘いを断り、同僚を連れてその場を離れたのだが、彼からはその後「助かった」と言われたのを覚えている。

ゲイだろうと異性愛者だろうと、女性が「ご褒美」になり得ない男性は抑圧され、「ご褒美」だと思っていてもそれを手にできない男性は強迫されるのが、この男性社会なのだ。そしてそこに女性の貧困問題が絡むことによって、女性が性的に搾取されやすい環境が出来上がっているのは言うまでもない。

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かつての上司が僕を風俗に誘った行為は、こうして社会に色濃く染みついた女性観をそのまま体現している。その後上司からは風俗のみならず、合コンの誘いなどを受けたりもした。彼には婚約者がいたが、女友達を紹介してほしいと冗談混じりに言われたこともある。女性を「ご褒美」や「戦利品」のようにしか思っていない人間に、自分の大事な友達を紹介などするわけがない。
そんな彼を笑って許している周囲の空気にも気持ち悪さを感じた。まるで、「お前はこの空気感や価値観を共有できる仲間か?」と、訊かれているようで。

そうして上司からさまざまな誘いを持ち掛けられたり、それを見た別の男性上司が愉快そうに笑っていたりするのを見るのに耐えられず、数ヶ月で僕はその職場を離れた。