労働者階級も中小零細業者も損をする
この現代の帝国主義は、昔の帝国主義と大きく違う点が一点あります。
昔は植民地や発展途上国の人々が低賃金で搾取されても、先進国の熟練労働者に被害はありませんでした。
しかし現代は違います。技術が進歩したおかけで、発展途上国でもたいがいの工業製品がみんな作れてしまいます。
だから、現代の日本の帝国主義化は、低賃金を目指して企業の海外移転が進んで国内の雇用がなくなるし、海外子会社からの利潤送金のせいで円高が進んで国内景気は悪化するし、海外進出企業の低賃金激安製品が逆輸入されて国内競合産業は壊滅するし、労働者階級にとっても中小零細業者にとっても、全くもってろくなことはない路線です。
国内に残る労働は、低賃金か激務
でも、日本資本の繁栄をよしとする立場からすれば、たしかに「国益」にかなっているのでしょう。
製造業や農業などを衰退させて、国内に残る雇用は何か。非正規低賃金のサービス労働か、さもなくば、資源を集中すべき「生産性の高い」分野の「高付加価値」労働です。
これを称して支配エリートは、「産業構造の転換」と言ってきたのです。
低賃金サービス労働者の方は、先述したとおり、海外のもっと低賃金の国で作られた生活物資が円高で輸入されるので、それが激安で買えて生きていけます。
それに、製造業などで雇用がなくなる分、低賃金のサービス労働として、高齢化で必要になる介護労働は確保できて、人手不足問題もばっちりです。
それで、国内に残す高付加価値工程については、労働者を「高プロ」制で残業代をろくに出さずに長時間こき使って、この体制下でも国際競争力を維持しようというわけです。
アジアの盟主の地位を支えるイデオロギー
こんなに民衆にとってろくなことはない体制なのに、東南アジアでごたごたが起こったら巻き込まれて、中国や韓国と張り合って、場合によっては自衛隊が出張っていく。そんなことにどう国民的合意を作るのでしょうか。
そのために、過去の日本の侵略の指摘を言いがかり扱いして、「欧米の植民地支配から東南アジアを解放した偉業」として美化し、それを現代に引き継ぐ国民的使命感に訴えるイデオロギー宣伝・教育が必要になるのだと思われます。
こう考えると、政府・自民党がこの間やってきたことの一つ一つがみんなジグソーパズルのようにうまくはまります。もちろん私は、この国を動かす黒幕が軽井沢の湖畔の別荘に集まって、こうしたことを全部設計したと言うつもりはありません。
過去四半世紀の支配エリートのコンセンサスの流れの上で、官僚や政治家や財界エリートが、それぞれの持ち場で合理的にパーツパーツを作ったならば、大状況に流された自然の成り行きで、結局きれいにつじつまが合った全体像が出来上がるものなのだと思います。