「71人を殺害した」と話しているにもかかわらず、ゲイリー・リッジウェイは余罪を追及されることなく、全米でトップクラスのセキュリティレベルを誇る「フローレンス・ハイセキュリティ刑務所」にて今もノウノウと生活している。
なぜ女性ばかりを殺害したのか?
ゲイリー・リッジウェイは、なぜ「性を職業とする女性」を71人も殺害したのだろうか? 私は長年「置かれた環境がどういった行動を引き起こすか」という、「環境と行動パターンの関係」を研究してきた。彼のような攻撃的人格は、「遺伝」と「環境」の両方が複雑に絡み合って形成される。そして何か現実の出来事が引き金(ストレッサ―)となって、連続殺人のような「具体的な暴力行為」が始まるケースが多い。

ゲイリー・リッジウェイが「連続殺人を起こした主因」が「抑えきれない性的渇望(Lust Murder)」であることは間違いない。産まれたばかりのヒヨコが最初に目にした動くモノを親と思い込むのと同じように、臨界期(0~4歳、特に脳とそのシナプスが形成される0.5~1.5歳)に性的要素を「刷り込まれる」と、「性への執着」は生涯その人格の一部に組み込まれることもある。
ゲイリーの場合、「肉親である母親への性的興奮」や「母の手による自分の陰部への直接的な接触」といった性的な刺激だけでなく、「母親による父親への暴力行為」、「母親の抑圧的・支配的言動」という暴力性も日常的に目にしていた。
もし仮に「幼少期からの性的刷り込み」と「攻撃性・暴力性」が融合してしまうと、性的欲望が芽生える度に暴力性と結びつく。こうした強い暴力性を帯びた性欲は、たとえ相手が死んでしまった後であっても、「その一線を越えて性交したい」という「歪んだ性欲」へ発展してしまう可能性がある。
ゲイリーにとって殺害した「売春婦」たちは、自分に怒りを植え付けた「母親」のイメージと同化していた。極言すれば、殺害された71名は、ゲイリーが直接立ち向かえなかった母親の身代わりだったのだろう。