1億年前からずっと生きていた微生物を海底下の地層で発見!

海より深いところに潜んでいた命
海洋研究開発機構 プロフィール

失敗から学んだこと

──何日間、培養したのですか。

諸野 あまり早く培養を止めてしまうと、まだ微生物がエサを食べていないかもしれません。栄養がとても少ないところにいる微生物なので、生命活動はゆっくりしていると思われます。そこで培養期間は、21日と68日、そして念のためもっと長い557日(約1年半)の3種類にしました。

──掘削航海は2010年ですから、1年半培養しても2012年です。今回の発表まで時間がかかっていますね。

諸野 当時はまだ、海底下微生物の解析技術が十分ではありませんでした。だから、培養した堆積試料をホルマリンで固定して、最適な解析技術ができるまで待つことにしました。そして私は、解析技術の開発を進めたのです。

──微生物がエサを食べているか気になり、ちょっと調べてみよう、と思ってしまいそうですが……。

諸野 実は、JAMSTECに来たばかりのころ、恐ろしい経験をしているのです。私は、下北半島八戸沖の海底下から採取した堆積物試料に含まれている微生物の数を調べていました。よく使われるDNAを蛍光色素で染める方法で調べると、1立方cm当たり1000億もの微生物がいる、という結果になりました。

それまでの推定の100倍以上だったことから、教科書が書き換わる大発見だ!とJAMSTEC内で大騒ぎになりました。みんなが盛り上がる脇で、私はどんどん不安になっていき、別の方法でも確認してみようと電子顕微鏡で観察してみました。すると、微生物がいない……。微生物ではないものが蛍光を発していて、それを数えてしまっていたのです。

そういう失敗を経験しているので、試料が目の前にあっても飛び付かず、確実な方法で解析するようにしています。

泥の中から微生物を取り出す新技術

──解析に当たって、どういうことが問題になっていたのでしょうか。

諸野 微生物の数より泥の粒子の数の方が圧倒的に多いため、正確に解析するには微生物だけを取り出す必要があります。2010年当時にも、微生物を取り出す方法はありました。それは、密度の異なる2種類の溶液を重ね、微生物を含む泥水を加える、という方法です。

泥の粒子は重いので沈み、微生物は軽いので浮くことを利用して、微生物を取り出します。しかし実際は微生物が泥の粒子に引きずられて沈んでしまい、1割くらいの微生物しか取り出せませんでした。

──どのように解決したのですか?

諸野 密度が異なる溶液を4種類にしました。すると、微生物が泥の粒子に引きずられて沈んでしまっても、次の密度の境界で泥の粒子と離れるため、生物を取り出せる割合が大きく向上したのです。

密度の異なる溶液を4層重ねて、微生物を含む泥水を垂らすと、密度の大きい泥の粒子が沈み、浮かんだ微生物を回収できる
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この開発では、流体力学の知識が役立ちました。大学の授業で習ったときは、自分の研究で使うことはないだろうと思っていました。しかし今では、真面目に授業を聴いていてよかったと思います。

密度の異なる溶液を使って取り出したものを、さらにセルソーターという装置にかけることで、まだ残っている泥の粒子の中から微生物だけを取り分けて集めることができるようになりました。それが2014年です。

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