韓国ドラマで今主流は「リアリティ」

未だ人気衰えない韓国ドラマ『愛の不時着』。2003年に初期の韓流ブームを作った韓国ドラマの金字塔『冬のソナタ』の記録を塗り替えそうな勢いだ。

しかし、このブームメント、日本と韓国では少し温度感が違うようだ。

社会現象にもなった『愛の不時着』だが、韓国映画の主流とは言い切れない。photo/Getty Images

「確かに、『愛の不時着』はおもろしかった。でも、『愛の不時着』=韓国ドラマ、という風潮にはちょっと違和感もある」と言うのは、ソウル在住でエンタメ系に強い韓国人の友人だ。彼女以外にも、『愛の不時着』のおもしろさは認めながらも、「今の韓国ドラマの主流は違うところにある」と語る人は少なくない。

「『愛の不時着』は往年の韓国ドラマの要素をふんだんに盛り込んでいる。メロ(メロドラマ)もあり、アクションもあり、笑いもあり、北朝鮮に政治的要素だけでなく古き良き時代感を盛り込んだのもおもしろい。

でも、今韓国で人気が高いのは、リアリティを追求した作品。もちろんファンタジー要素のある作品やコメディもあるけれど、あまりに突飛な設定、非現実的な設定にはみんな飽きてしまった。関わるはずもない財閥2世や完全無欠な王子様よりも“私たちの日常”を描いてもらいたい、という声が多い。映画ではかなり前から『パラサイト』のようにリアルな韓国社会に切り込む作品が多く出ている。ドラマでも今の韓国が見える恋愛模様や等身大の生活、社会問題を描いているものが数年前から増えている」と友人は話す。

 

そんな声に答えたのが、脱地上波だ。韓国でも数年前から地上波離れが進んでいる。地上波からケーブルテレビやインターネット番組に、優秀なプロデューサーや脚本家、俳優たちが流れている現象も起きている。その結果、地上波とは違う、冒険した作品がつくられるようになった。『愛の不時着』も脱地上波の秀作のひとつといえるだろう。

そんな中で、リアルを追求したストーリー設定や映画のような映像美にこだわった作品も生まれてきているのだ。