2020.09.09
# 日本株 # 米国株

手数料ゼロの人気投資アプリ「ロビンフッド」 ウラで誰が損するのか?

あなたの注文が覗かれる?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

例えば、ある株に100ドルの値がついているときに、ロビンフッドからの買い注文が入るのが見えれば、HFTはマイクロ秒単位で出し抜いて先に100ドルで買い、それを後からくるロビンフッドユーザーに100.5ドルなどで売りつけて、鞘抜きをすることが可能だ。ロビンフッドユーザーにとってはその分、トレードコストが嵩むことになる。

「ロビンフッド・ラリー」の背後には、こうしたHFTの自動プログラムが動いてサヤ抜き売買のボリュームが急速に膨らみ、株が乱高下した可能性が高い。

個人ユーザーのオーダーフローをHFTに回すことは、ロビンフッドだけでなく、手数料ゼロで追随したシュワッブ、TDアメリトレードやEトレードなど、他の大手もやっている。もし証券会社自体が顧客の発注情報を利用してフロントラニングすれば、違法になる。しかし、証券会社がリベートを受け取って発注情報を流し、それを掴んだ第三者が先回りして利益を得ることは合法的に行われているのだ。

でも、倫理的な問題は残る。他人のお金を扱う金融機関は顧客の利益が最大になるようベストを尽くす信認義務(フィデューシアリー・デューティー)があるが、ロビンフッドのビジネスモデルは、リテールとプロ顧客の間の情報テクノロジー格差の上に成り立つもので、両者の利益相反を生む。そもそも、「99%」の個人投資家の情報を「1%」に売りつけて稼ぐビジネスを「金融の民主化」と呼ぶのはいかがなものだろう。

さらにロビンフッドは、つい最近までユーザーが保有する「人気株」情報も開示していた。誰でもアクセス出来たので、その情報をほぼリアルタイムで伝達するロビントラックという名のサイトを、全く別の企業が運営していた。

プロの投資機関なら、この情報を自動プログラムに取り込んで、ロビンフッドユーザーの買いが本格化する前に先買いし、ピークアウトする前に売り抜けてサヤ抜きすることも可能だろう。アマチュア投資家をプロトレーダーの食い物にしているという批判を受けて、会社側は8月初旬に保有情報の開示を停止した。

 

日本での手数料無料化は成功するか?

さて、ロビンフッドの「手数料無料」の衝撃波は日本にも伝わり、昨年秋からSBI証券を皮切りに、楽天、マネックス、松井などオンライン証券各社が次々と、委託手数料の無料化に踏み切った。ただし完全無料化ではなく、今のところ1日の取引金額50万円まで、などと上限がついている。

日米では事業環境が違い、簡単には米国の真似はできない。まず米国の証券会社は、収益源が多角化している。信用トレードをするユーザーからの利息収入以外にも、銀行業務として決済口座の資金を短期市場で運用するなど、金利収入の比率が高い。チャールズ・シュワッブなどでは、委託手数料はすでに収益(売上)全体の1割以下にまで下がっていた。

米国のネット証券は、無料化しても痛手が少ない体質になっていたのだ。一方、日本のネット証券各社は、手数料収入が収益の3割から5割以上と比率が高いところから無料化競争に飛び込んだ形だ。

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