2020.09.09
# 米国株 # 日本株

手数料ゼロの人気投資アプリ「ロビンフッド」 ウラで誰が損するのか?

あなたの注文が覗かれる?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

そしてもう一つ、日米で大きく違うのが証券取引所の構造だ。

日本では、東証の取引シェアが9割以上とほぼ独占状態だ。これに対して、米国では13もの取引所(9月末には16になる)がある上に、50以上ものダークプール(証券会社のシステム内での取引マッチング。売り買いしたい値を示す「板」が非公開なのでこう呼ばれる)が乱立する。

また日本では、東証なら東証、名証なら名証と、その株式が上場されている取引所でしか株を売買することが出来ないが、米国では数十もの取引所を一つの市場として統合する「ナショナルマーケットシステム(NMS)」が作られ、どの取引所に上場する株でも売買できる。その際、どこで注文を出しても顧客にとって最も有利な価格での売買となるよう「最良執行 (best execution)」をすることが義務づけられている。

逆にいうと、最良執行が出来ないと売買が成立しないので、取引所やマーケットメーカーにはブローカー(証券会社)にリベートを払ってでもなるべく多くの売買発注を自分のところに集め、流動性(取引のしやすさ)を高めたいというインセンティブが働く。オーダーフローに対するリベート(PFOF)は、こうして生まれたものだ。

PFOFとHFTの先回りトレードについては、これを暴露した2014年のマイケル・ルイスの『フラッシュ・ボーイズ』が大きな話題になって以降、複数の裁判やSEC、FINRA(金融業界の自主規制機関)などで議論が続いてきた。しかし、HFTを含めたマーケットメーカーの存在は、売買取引を活発にして売りと買いのスプレッドを縮小し、結果として投資家にとってのトレードコストを下げるというメリットもあるので、痛し痒しだ。

結局、「グレー」なまま当局の判断が棚上げされた形で、発注情報にリベートを支払う慣行は今も続いている。

一方、東証のシェアが9割以上の日本では「最良執行」が東証で起きやすく、証券会社が取引所外に注文を回して手数料を節約したりリベートを稼ぎたくとも、選択肢が極めて限られている。そのため、今のところHFTの「先回り」も、米国ほど大きな問題になっていない。

ただ、公設取引所の寡占が残っているのは、欧米のメジャーな株式市場の中では日本だけ。最近は、野村系のチャイエックスやSBI系のジャパンネクストなどの PTS(証券会社の私設取引所)の取引シェアも伸びつつあり、今後急速に取引所間の競争が増える可能性もある。

そうした中で昨年11月、PTSを保有するSBI証券のSOR(最適な市場に注文を回送するシステム)で、10月頃から一部ユーザーの発注情報が100〜300ミリ秒間外部に晒され、HFTに先回りされた可能性があると日経新聞が報じた。これに対してSBIは、報道があった「11月18日から」システム上のタイムラグは「0ミリ秒」になっている(=外部から見られない)と発表した。

将来的には日本でも、投資家が「板」を見て売買注文を出した途端、誰かに先回りされてその数字が消えてしまうといった事態が頻発し、大きな議論を呼ぶことになるかもしれない。
 
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