菅政権の最注目政策「デジタル庁」に待つ茨の道

積年の課題に、ついに手をつけた

ある意味、民間のデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)は放っておいても進む。資本の論理と自由競争のなかで、デジタル化、DX化に乗り遅れれば、市場からの退場を余儀なくされるかもしれないからだ。政府の役割は、自由競争のアクセルを踏むための規制緩和と、行き過ぎた競争にブレーキをかける規制強化のバランスだ。

行政には、こうした競争原理が作用しない。あるのは「こうしなければならない」「これをやってはいけない」という規制ばかりで、しばしばそれが「四角四面で、融通が効かないお役所仕事」と批判される。しかし法治国家である以上、行政は法律に基づいて、正確に遂行されなければならない。

しかし、実はこうした「規則だらけ」の行政事務こそ、ITがフルに本領を発揮するフィールドなのだ。行政事務は法律と細則に基づいて処理されるからである。「法律は行政ITシステムの仕様書」と片山卓也氏(東京工業大学名誉教授、元北陸先端科学技術大学院大学学長)は指摘する。

 

もし行政手続きがネット化されたら…

縄張り争いで表向き「犬猿の仲」とされる経産省と総務省だが、「行政事務と行政手続きのDX化が喫緊の課題」という認識では一致している。政府機関システム基盤として新たに採用したAWS(Amazon Web Service)のパブリッククラウドを基礎に、総務省は電子行政システムの共通仕様を、経産省は官―民のシステム連携(ワンストップ/アトワンス/押印レス)を進めている。

ただ、両省が政策連携を話し合っているかというと、そうではない。実は内閣官房のIT総合戦略室が、両省の仲介役ないし司令塔の役目を果たしてきた。その裏付けは、2000年11月に制定された「IT基本法」(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)だ。

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