現地でのトレンドは「深いメッセージ性」と「共感できるリアリティ」

韓国ドラマは視聴者のニーズの変化に合わせ、その後もどんどん進化を続けてきた。Netflixの登場で、豊富な制作費の確保と、さらに多様な表現が可能となってきている。その最新のトレンドを知るには、毎年開かれる韓国のゴールデングローブ賞と言われる「百想芸術大賞」の受賞結果に注目するとよい。特に、テレビ部門の「大賞」または「作品賞」の受賞結果を見ると、その年のドラマのトレンドを知ることができる。

2020年には、『愛の不時着』『梨泰院クラス』を押さえて『椿の花咲く頃』が大賞を受賞。2019年は『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』が作品賞を受賞。2018年は『秘密の森』が大賞を受賞している。

「人は人の奇跡になりうるか」というテーマにサスペンスの要素も織り交ぜられ、韓国では社会現象になった/『椿の花咲く頃』より

これら近年の受賞作に共通してるのが、どれもラブストーリーの要素が中心にはないことだ。『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『秘密の森』に至っては、恋愛自体がほとんど描かれていない。3作品とも同時に脚本賞も受賞しており、視聴者を唸らせる脚本力が評価のポイントであることもわかる。

このように、自分の生き方や社会のあり方を考えさせられるような、深いメッセージ性を持った作品が、ここ数年の韓国現地でのドラマのトレンドだ。

警察と検察を舞台に、事件だけでなく「検察組織の闇」という社会問題にまで切り込んだ社会派ドラマ/『秘密の森』より

普段から、ドラマのみならず、映画や演劇など多様な作品に触れている韓国視聴者は、常に「今までにない新しい要素」を求め続けるため、恋愛模様だけが強調されるドラマは、どこかもの足りなさを感じるようだ。恋愛を描くにしても、「今までと、どう切り口が違うのか?」が求められ、作品の根底にあるメッセージ性が問われる。

ドラマは、単に楽しむだけでなく、「人生や価値観に影響を与えるもの」として進化しているのである。