「こちらは悪くない」で許されるのか
被害に遭った人からすれば、「こちらは悪くない」と対応されても、何の解決にも至らないこともまた事実であり、不正送金の被害に遭ったのであれば、金融機関ないしドコモが補填するのが、あくまで道理としては「筋」というものだ。
ユーザーの立場から考えてみれば、「本人確認」は非常に面倒な作業だ。現住所確認の書類を送り、書留を送る、身分証明書をスキャンして送る、SMSで認証番号を受け取って入力する…。それすらも厄介だと思うユーザーは多いが、今回のようなセキュリティの甘さが露呈すれば、元も子もない。
近年、アプリで口座管理を行い、それぞれを家計簿アプリなどで紐付け、管理することも当たり前になってきた。そのこと自体は何の問題もないが、「向こうのセキュリティは大丈夫だろう」と安心し切っているサービスの掛け合わせで、ポッカリと大きな穴が空いてしまい、不正利用者の餌食になる危険性は、決してどの事業者も他人事ではないはずだ。
前出・石川氏は言う。
「今後ネットを使った金融サービスが増え続けるうえで、さらに大きな不正引き出しの事件が起こるかもしれない。今回のドコモ口座の問題は、そのことを私たちに教えてくれたとも言えます。
セブンアンドアイHDが発表した『セブンペイ』をめぐるセキュリティ問題は、あくまで同社単独のお粗末なガバナンスが引き起こしたと言えます。ただ、今回は複数の会社(金融機関)が絡んでいる。それだけに、問題が起こった後の対応も難しくなるでしょう」
ドコモをはじめとする関係各社は対応策に追われているが、その間にも不正引き出しは増えている。責任のなすりつけ合いではなく、ドコモがユーザーに親身になった早い対応をすることを願うばかりだ。