2020.09.24
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遺産相続の「いがみ合い」はなぜ起こる?精神科医・名越康文がズバリ答える

「遺言がなくても大丈夫」の落とし穴
名越 康文, 竹内 亮 プロフィール

「俺のいうことを聞け」は会議ではない

竹内:たしかに、話し合いで相続のすべてを決めるというのは簡単ではないと感じます。その意味で遺言があれば、話し合いをするとしてもシンプルになると思います。遺言を作る過程で、残していく家族と相談するというのはどうでしょうか。

名越:生前に家族会議で遺言の話ができるというのは、力量がある人だろうと思います。「俺のいうことを聞け」というのは会議ではありませんから、相手の状況をよく判断して話し合わなければなりません。たとえば、お父さんが、「お前ら何が欲しい?」くらいなことはいえる力量が必要です。

そういう意味では、アドラー心理学の技法をちょっと学んだ後にやってみる、簡単にいうと、冷静な議論のやり方を学んだ上で初めて可能なのが、家族会議ではないかと思います。家族に限った話ではありませんが、話し合うには自分の力量を省みないといけません。

贔屓は自分ではわからない

竹内:そう考えていくと、遺言というのは、自分の成長の問題でもあるわけですね。遺言を書くことをきっかけに家族関係を考え直したり、家族と話をしたり、そのために自身が成長したりするチャンスがあると。

名越:その通りです。対人関係をより民主的にしていく機会にもなります。人間は人を激しく贔屓している可能性がありますが、その贔屓は自分ではわからないのです。

 

竹内:となると、一部の子どもにだけ相談するのは問題がありますか?

名越:ケース・バイ・ケースですが、特定の人に相談するという段階で不平等という見方もできます。

竹内:最後に、遺言は、どの時間帯に書くのがいいでしょうか。

名越:重要な決断は気分がいいときにしなければなりません。体調が悪いときにしてはいけません。難しいことほど、機嫌がいいときに決めるのがいいと思います。切羽詰まった問題があるとき、 暗い気持ちで書いたものは、基調が暗くなるし判断も間違いやすい。

ですから、晴れやかな気持ちのときに書いたほうがいいと思います。晴れた日の朝、午前中とかですね。

竹内:それはとても大切ですね。ありがとうございました。

<了>

対談全文は、以下の書籍に掲載されています。

自分で書く「シンプル遺言」 簡単なのに効力抜群!

竹内 亮著 講談社刊


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