未来を生きる子どもたちに必要なスキル

このような人間性やコミュニケーションスキルは、何もハーバードを目指さなくても、これからのグローバル社会を生き抜く子どもたちに必須なものです。今のように入試テスト対策ばかりしていても、肝心のテストそのものが消滅する時代が来たら、他に複数の得意やスキルがある子どもたちが生き延びます。実際に、これまでの尺度で学力を測る共通ペーパーテストは、大学入試から無くなっていく傾向があります。それを示す事実が2つあります。

1つ目は、アメリカの研究により、大学入試の筆記試験の得点は、受験生の家庭の経済事情と正比例する、準備練習をすればするほど上がる、高得点者の人種の偏りが激しいと分かったこと。結論が出たので、これ以上学力テストをやっても意味がない、ということで、学力試験以外の力で、受験生は大学入試を突破することになります。

今年の8月、カリフォルニアの高等裁判所は、共通学力テストの点数を大学入試に使うことを禁止する仮差し止め命令をだしました。これによりカリフォルニア大学の入試は、学力共通テストが段階的に廃止されます。他の大学も学力テスト廃止、またはオプション(提出してもしなくてもよい)にどんどん移っています。学力は学校の授業を最低限こなして身に付け、学力以外の得意やスキルや人間力も加わった大学入試を突破することになります。

-AD-

ハーバード大学のすごいところは、貧困家庭からも才能の芽を見出し、10代前半で将来性のある子をスカウトして全額奨学金でサポートするところです。Summer in JAPAN にこれまで迎えたハーバード生講師の中には、ケニアの過疎の農村の女生徒(1年足らずで論文が書けるまで英語をマスター。ハーバード卒業後は北京大学に留学)や、ブラジルの貧困家庭で育ち父親はドラッグ中毒で亡くなり、シングルマザーが掃除の仕事をして育てた女生徒(のちにブラジルの史上最年少の女性国会議員となる)などもいました。アメリカのトップ大学は、キャンパスに多様性を作り出すことに余念がありません。多様性こそが、社会を進歩させると分かっているからです。

国籍やバックグラウンドはさまざまなハーバード生たちだが、共通するのは、自分の得意を持つ自己肯定感のかたまりであること 写真提供/廣津留真理

2つ目は、特に今年はコロナ禍の影響で、 アメリカでは大学共通学力テスト(SAT/ACT)の受験なしでもトップ大学入試が受けらるようになったこと。この傾向から言えるのは、大学が求める学生像が刻々と変化していることです。(参考:ハーバード大学2021年年度入試

これは、アメリカだけと思うでしょうか? オンラインで全世界がつながるこの時代、広い世界を舞台に子どもたちが自分らしい人生を輝かせるためには、「点数や偏差値を上げて受験で勝ち抜いて、大企業に入ってくれたらいい」というこれまでの大人の常識は通用しません

そして、子どもの自己肯定感を育み、自分の得意を伸ばし、コミュニケーションスキルを上げる方法は、学校では教えてくれません。まずは家庭で伸ばすしかないのです。

廣津留さん主宰のサマーキャンプでは、人の心をつかむスピーチのメソッドなど、世界で通用するコミュニケーションスキルをハーバード生が教えてくれる 写真提供/廣津留真理