SNSなどで、体型に関するポジティブなメッセージを配信し続けている、プラスサイズモデルの吉野なおさん(モデル名:Nao)。過去に「摂食障害」も経験し、そのときの写真を使って、巷に溢れるダイエット広告を風刺するパロディ広告を作り、SNSでも話題を集めています。

30万近く、いいねがついたSNSで話題になったダイエット広告のパロディ。

そんななおさんが綴る、体型や外見に関するルッキズムを考える連載。今回は、なおさんがボディポジティブについて考えるきっかけとなった摂食障害の体験と、背景にあった元カレのモラハラについて執筆してもらいました。

自己肯定感ゼロの私に「デブ警察」の彼ができる

今では自分のふくよかな体を愛せるようになった私だが、その昔、デブを批判し過剰にダイエットを促してくる男性(以下、A氏)と付き合っていた経験がある。

思い出すと心に激痛が伴う話だが、むしろその経験があったために、自分の体を愛することの大切さが分かるようになった。いわゆる『デブ警察』の人と付き合ったらどうなるのか、あくまで一例だけれど、私の経験を話してみようと思う。

 

幼い頃から長らくぽっちゃり体型に悩んでいた私は、思春期になると異性の目や恋愛を気にしてさらに悩むようになった。好きな人と両思いになりたいとか彼氏が欲しいなと思っても、私の身の回りでモテたり彼氏ができるような女の子はたいてい可愛くて、細身の子ばかりに見えたのだ。

「彼女が欲しい男の子がいるから紹介するよ」と言われ会ってみると、私を見るなりあからさまにガッカリした態度をとられ傷付くこともあった。見よう見まねで彼氏という存在を作ってみたこともあるが、うまくいかず長続きしなかった。そんな時、心の隙間に語りかけてくるような「痩せたら素敵な彼氏が出来ました!」というダイエット広告やダイエット番組を目にして、やっぱり太っていたら恋愛は難しいのだ、と心のどこかで思わざるを得ない気持ちになっていた

「痩せてないから彼ができない」なおさんもそんな思いに10代の頃陥った。photo/iStock

痩せなきゃ……と常に思っていた私が17歳ごろ、メル友として知り合ったのがA氏だった。彼は年上で頭が良く物知りで頼りになる社会人だった。そんな『きちんとした大人の男性』と知り合ったことがなかった私には彼がとても魅力的に見え、自然と好意を抱くようになった。

彼も私を気に入ってくれたのだが、「好きだけど痩せて欲しい、痩せた方が絶対可愛いよ」と言われたことで、私は本格的なダイエットをするようになった(自覚はなかったが、この頃から摂食障害になり始めていた)。

知り合ってしばらく経ち、私が高校を卒業した後、A氏と付き合うことになった。