医者になるにはお金がかかりすぎる? 医学部の学費と経費の問題

日本は特殊か普遍か
「医者になるにはお金がかかる」「裕福な家の子じゃないと医学部に入れない」は本当でしょうか? このほど『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』を上梓した奥真也氏が、日本とアメリカ、ヨーロッパの医学部学費を比較しながら、事態の真相に迫ります。さらに、「「医師1人育てるのに1億円」は税金のムダ」バッシングの真偽についても明らかに!

日本の医学部の学費は高額か

日本の医学部の入学金と授業料については、その高額な値段が批判の対象になることがよくあります。

「あまりに高くて平均的な家庭の子女ではとても入れない。結果的に世襲の医者が増え、医師という職業が一種の家業、既得権になっている」と批判されたりもします。

ただ国立大学の医学部に関して言えば、入学金28万2000円、年間授業料53万5800円が基準額(千葉大学と東京医科歯科大学は2020年4月入学者から年間授業料64万2960円)です。

28万2000円+53万5800円×6年は349万6800円。トータル約350万円を払えば医師になることはできるということになります。

一方で私立の医学部は、2020年現在で最も安い国際医療福祉大学(栃木県)の医学部でも6年間の学費総額が1910万円。最も高額な川崎医科大学(岡山県)になると4736万5000円となります。

こちらはたしかに、一般家庭が出せる額ではありません。

アメリカでもお金はそれなりにかかる

ただ、外国に目を向けてみると、たとえばアメリカでも非常に多くのお金をかけないと医師にはなれません。

アメリカで医師を目指す人はメディカルスクールで4年間学ばないといけませんが、これは学部ではなく大学院です。4年制の大学の(医学部以外の)学部を卒業した後に、さらに4年間の医学部大学院で学ぶので合計8年間かかるということになります。

学部やメディカルスクールの学費は州や大学によっても違いますが、年間の授業料だけで日本円にして400万円前後かかります。諸経費を合わせると8年で4000万円以上はかかると見たほうがいいでしょう。

そもそもアメリカの場合、カリフォルニア州立大学やワシントン州立大学などの公立大学は全体で見れば例外的で、大学といえば多くは私立です。日本人がよく知っている名の通った大学、たとえばハーバード大学もペンシルバニア大学も私学です。

各種の奨学金制度は日本より充実していますが、基本的に大学とはお金がかかる場所なのです。