2020.11.17
# マンガ

“スパイ”に“取り違え子”…ジャンプとマガジンで「複雑な家族モノ」が人気のワケ

『SPY×FAMILY』『カッコウの許嫁』担当編集が語る
杉山 仁 プロフィール

家族に対する感覚が変わってきた

それぞれ異なるユニークな作品ではあるものの、共通しているのは、シンプルな血縁関係にとどまらない家族の絆や、家族のかたちの多様性が描かれていること。

思えば、2018年に世界三大映画祭のひとつ、カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した、是枝裕和監督による疑似家族をテーマにした映画『万引き家族』や、翌2019年の同賞&アカデミー作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』など、昨今は様々な分野で家族を描いた作品が話題になっていた。

 

これは「これまでの血縁関係だけの家族の在り方への違和感」と「色々な家族があっていい、色んな家族が描かれていい」という、今の時代らしい傾向とも見えるのだ。

そして、『SPY×FAMILY』と『カッコウの許嫁』の場合は、どちらもシリアスになりすぎず、随所にそっと差し込まれるコミカルなユーモアが心地いい。

通常、複雑な家庭を描くとどうしてもエピソードが重くなりがちだ。しかし、そこをマンガ特有のコミカルさで描くことで、「ああ、彼ら彼女たちにとっては何気ない日常なんだな」と思えてくる。複雑な家族事情でも、自然体で応援したくなる姿に共感を覚える内容になっているのだ。

『SPY×FAMILY』の第1話より ©遠藤達哉/集英社
『カッコウの許嫁』の第1話より。どちらの作品もこれまでの家族作品とは一風変わった雰囲気を感じる

僕は小さい頃に『赤ちゃんと僕』(白泉社)がすごく好きだったんです。あそこにも、大家族がいたり、ひとりっ子がいたりと、色んな家庭が出てきていたと思います。

もちろん、『赤僕』は小学生の男の子が幼い弟の世話をしなければいけなくなるという、『SPY×FAMILY』とはまた違うテーマでしたが、実は作者の遠藤さんも『赤僕』が好きだったそうで、「『赤僕』ではこうでしたよね」と、互いの共通言語のようになっていたりもしました」

乙黒「『カッコウの許嫁』の連載がはじまった頃には、既に『SPY×FAMILY』が人気を集めていましたし、カンヌ映画祭で毎年家族をテーマにした映画が受賞するなど、世の中的に『家族』を描いた作品が広く話題になっていました。

そこで、本誌で凪とエリカ、妹の幸の3人が「洋平(海野家の父。凪と幸の育ての親で、エリカ&幸の血の繋がった父親)と釣りに行く回」を恐る恐る出してみたら、意外にもいつもより好評だったんです。

僕の感覚だと、少年誌のラブコメでデートに親がいるのはタブーだと思っていましたし、そもそも『父親と釣りに行って楽しかった回』って、週刊マンガではなかなかないと思うのですが(笑)、その辺りの感覚も変わってきているのかな、と実感しました。これはより家族をしっかり軸に据えていこう、と思うきっかけにもなったと思います」

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