竹中平蔵氏、じつはかつて「公共投資の拡大」を声高に主張していた

自在に変わる思想と「アメリカの影」
佐々木 実 プロフィール

たとえば、日米構造協議で物議をかもした「今後一〇年間で四三〇兆円」という、日本がアメリカに公約した公共投資計画に対する評価にそれは顕著にあらわれた。

そもそもアメリカ政府が日本政府に公共投資を増やすよう強く圧力をかけたのは、巨額の経常赤字に苦しんでいたからだ。アメリカの対外赤字の裏面としての、日本の経常黒字に目を向けたわけである。

日本の黒字を減らすためには、日本の内需拡大が必要だ。そこでアメリカ政府は「日本は公共事業を拡大せよ」と主張しはじめ、日米構造協議で「一〇年間で四三〇兆円」の国際公約を勝ち取った。日本政府からすれば予算編成権を侵害されたことになるが、アメリカ側の考え方では、日本の公共投資は多ければ多いほどいい。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

日米構造協議が終結したあと、竹中は「日本の公共投資」問題をにわかに研究テーマとして取り上げるようになった。

最初に発表したのが「社会資本ストックの経済学 『430兆円』公共投資と供給サイド」(『経済セミナー』一九九一年五月号)という共著での論文。論題からわかるように、日米構造協議が執筆の直接の動機である。その後も継続してこの問題を取り上げるのだけれども、「日本の公共投資は十分ではない」というのが一貫した主張だった。説明するまでもなく、アメリカ政府の主張を補強するものである。

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