そこで、2016年には683人、2017年には744人、2018年には928人、2019年には842人、今年は819人もの新会員が招待されることになった。2012年に「L.A.TIMES」が調査した時5,700人ほどだった会員数は、今では倍近くになっている。
人種、性別、LGBTQ、年齢を重視してこれだけの大人数の入会を認めた結果、まだ映画に1、2本しか出ていない人や、主にテレビで活躍する人などこれまでの会員とは毛色が違うメンバーも入ってきた。そのことについて、古くからの会員が「アカデミー自体の質が下がる」と強く非難をしている。
その点を克服しつつ、マイノリティ会員を増やすために、2017年から米アカデミーは、外国にいる著名な映画監督や俳優を積極的に入会させ始めた。その結果、かつては「圧倒的多数のアメリカ人とそこに混じっているイギリス人」の団体だった米アカデミーは、次第に世界的な映画人の組織へと生まれ変わってきたのである。
今年のアカデミー賞で韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を取ったのは、まさにその表れだ。多様化への努力がなされる前なら、白人監督でオール白人キャストの戦争映画「1917 命をかけた伝令」が、間違いなく取っていたはずだ。

だが、今オスカーに投票する人たちは、アメリカに住む高齢の白人男性だけではない。彼らの割合が一番大きいのは確かながら、アメリカ以外の国に住んでいて、各地の映画祭に頻繁に出席し、ハリウッド以外の映画を好む会員たちも、増えてきている。その結果、受賞作に多様性が生まれてきたのである。
改革のたどり着く先は…?
だが、会員構成を変えるだけでは、根本的な解決にならない。「#OscarsSoWhite」ムーブメントが盛り上がった時にも話題に出たように、そもそも作られるのが「白人を題材にした映画」ばかりという状況では、作品賞に選ばれる映画が偏ってしまってもしかたがないのだ。
つまり、賞よりもずっと前、「制作会社がどんな映画にゴーサインを出すのか」という映画制作の初期段階から、変えていかないといけないのである。