2020.09.29
# FinTech

「あなたの口座は世界中の犯罪者に狙われている」あまりに残酷な現実

ドコモ口座、SBI証券事件の検証
大原 浩 プロフィール

お金は命の次に大事だ

世の中では当たり前のこととして受け止められているが、パソコンやコンピュータソフトは、「未完成の製品」を発売して、発売後ユーザーにバグなどの問題点を見つけさせて修正していくスタイルだ。私は、このやり方は好きではないが、(一般的)パソコンやコンピュータソフトに問題があっても死人が出るわけでは無いのは事実だ。

しかし例えば、自動車のブレーキ系統を制御するソフトウェアにバグが見つかったらどうであろうか? 世間は大騒ぎとなり、多額の費用をかけてリコールしなければならないし、ブランドイメージに大きな傷がつく。

だから、各自動車メーカーは、テストコースでの念入りな試走も含めて、製品が完璧であるように万全を期して発売する。しかし、それでもリコールという事態は完全には避けられない。

ソニーの技術力は定評があるが、長年にわたって自動者関連分野には進出しなかった。「娯楽(エンタテインメント)産業と命を預かる自動車産業とでは根本的な設計思想が違う」からである。確かに安全第一主義で開発していれば「画期的で面白い」商品は生まれなかったかもしれない。

そして、お金は「命の次に大事なもの」と言える。

私が短資会社に勤務していた頃は、まだコンピュータがそれほど普及しておらず、銀行の支店でも手書きの伝票・帳票を大量に使用し、電卓・そろばんでの手計算も普通に行われていた。

当然「その日の集計数字が合わない」ということがしばしば起こり、行員たちは数字がぴったり合うまで、例え午前様になっても帰れなかった……

残業にうんざりした行員の1人が、「支店長、合わない1円なら私が持っていますけど……」と発言して、支店長を激怒させ他の行員たちの大ヒンシュクをかったという話が当時流布していたが、もちろん「1円」の問題ではない。

例えば、飛行機の点検で1センチの亀裂が発見されたとする。それは1センチの問題ではなく、数百人の乗客の命にかかわる重大問題の兆候と考えるべきなのだ。

あるいは、ある映画で、整備士が道具箱の中のレンチが1本ないことに気がついて「真っ青になる」というシーンがあった。そのレンチが万が一エンジンの中にでも紛れ込んでいたら大惨事を引き起こすから、整備士が総動員されて探すことになる。映画では目出度く見つかって飛行機は無事飛び立ったが、そうでなければその飛行機は離陸することができない。

同じように、支店の集計で1円合わないということも、「どのような重大な問題が隠れているか分からない」から、数字が合うまで行員は帰れないのだ。

 

金融業界で育った私はそれが当たり前だと感じるが、キャッシュレス関連企業の役員幹部、さらにはIT担当者の「設計思想」はそうではないと思われる。

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