息を吐いても大気中の二酸化炭素が増えないのはなぜか?

化石燃料の燃焼とは仕組みが異なる
更科 功 プロフィール

さきほど、植物はおもに水と二酸化炭素から有機物を作ると書いた。しかし、ここでは単純化して、水やその他の要因は省略する。そして、二酸化炭素についてだけ考えることにする。

光合成を思いきり単純化すると、以下のような式で表せる。

CO2二酸化炭素)→O2(酸素) + C(有機物)

生物の体を作る有機物の主な成分は炭素(C)である。だから、最後のCは、有機物を示していると考えよう(実際にはCだけが独立に存在しているわけではない)。つまり植物は、空気中の二酸化炭素を分解して、その中の炭素を使って植物体を作っていくわけだ【図1】。

植物の一生と、大気の関係【図1】植物の一生と酸素、二酸化炭素、有機物の関係

そうして大きくなった植物も、いつかは枯れる。植物の中には長く生きるものもあるけれど、生物である以上、永遠に生きることはできない。枯れれば、植物体は分解されて、なくなってしまう。なぜなら、植物体を作っている炭素が、大気中の酸素と結合して、二酸化炭素に戻るからである【図1】。つまり、植物の一生で考えれば、植物は大気中の二酸化炭素を増やしも減らしもしないのだ。

呼吸をするのはミトコンドリア

次に、私たち人間について考えてみよう。私たちは、植物と違って光合成ができないので、自分で有機物を作ることができない。だから、他の生物の有機物を利用しなくてはならない。つまり、他の生物を食べなくてはいけない。

たとえば植物を食べて、その有機物で体を作らなくてはいけない。もちろん、植物以外のもの、たとえば牛肉を食べることもあるだろう。しかし、その牛肉は、ウシが植物を食べることによって作られたものだ。だから肉を食べたとしても、元を辿れば植物に行き着くのである。

【写真】肉を食べても、元を辿れば植物に行き着く肉を食べても、元を辿れば植物に行き着く photo by gettyimages

一方、私たちは、呼吸もしなくては生きていけない。大気中の酸素を吸わなければ、苦しくなって死んでしまう。鼻や口から吸った酸素は、細胞の中にあるミトコンドリアという細胞小器官に運ばれる。

【図】動物細胞(核とミトコンドリア)動物細胞と細胞小器官 illustration by gettyimages

ミトコンドリアは私たちの細胞の中にあって、酸素呼吸を行っている。有機物と酸素を吸収して、二酸化炭素を排出しているのだ。何のためにそんなことをするのかというと、それはエネルギーを作るためだ。私たちは歩いたり、体の中で胃や腸を動かしたりするために、つまり生きていくために、エネルギーが必要なのだ。

ミトコンドリアにエネルギーを作ってもらうためには、有機物と酸素が必要だ。そして、有機物は食事から、酸素は呼吸によって、手に入れることができる。そうして私たちは、日々生きているのである。

息を吐いても二酸化炭素は増えない

さて、それでは最初の疑問に戻ることにしよう。私たちは毎日二酸化炭素を排出している。そのために地球の温暖化が進むことはあるのだろうか。これまでに述べた、植物と人間の話をつなげて考えてみよう。

私たちが呼吸で排出するのは二酸化炭素だが、まずはその中の炭素についてだ。この炭素は、私たちが食事によって手に入れたものだ。つまり結局は、植物体の中にあった炭素である。さらに、植物体の中の炭素は、元はと言えば、光合成によって大気中の二酸化炭素を分解して、手に入れたものである。つまり、私たちが二酸化炭素の形で大気中に吐き出した炭素は、もともと大気中にあった二酸化炭素の中の炭素ということになる【図2】。

【図】人間が加わった場合の大気のバランス【図2】人間が加わった場合の酸素、二酸化炭素、炭素のバランス

次は二酸化炭素の中の酸素についてだ。この酸素は、元はと言えば、私たちが呼吸によって手に入れたものだ。つまり、大気中にあった酸素だ。さらに、この大気中の酸素は、元はと言えば、光合成によって大気中の二酸化炭素を分解して、余った酸素を大気中に捨てたものだ。つまり、私たちが呼吸によって吸い込んだ酸素は、もともと大気中にあった二酸化炭素の中の酸素ということになる【図2】。

まとめると、私たちが呼吸によって大気中に排出する二酸化炭素は、元はと言えば大気中にあった二酸化炭素ということになる。だから、いくら呼吸によって二酸化炭素を吐き出しても、大気中の二酸化炭素は増えないのである。

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