そして平手の脱退後、この映画のためにあらたに撮影されたインタビューでは何人かのメンバーが当時の様子や空気を証言しているが、そこには平手友梨奈自身の言葉はない。
平手友梨奈がかつて本当にこの集団のパフォーマンスの中心にいたこと、それは実際に起こったことだったと確認するために、みんなが懸命に語っているように見える。
強く喪失感が漂っている。
『僕たちの嘘と真実Documentary of 欅坂46』は、つまり、「いかにして平手友梨奈はたった一人で孤高の高みを目指して駆け上がっていき、残された者たちはそれをどういう思いで見つめ続けていたのか」ということを描いた映画でもある。
グループ結成当時の平手友梨奈は14歳で、デビュー曲を出したときは、ふつうにまっすぐ明るいアイドルに見える。デビューにむかって、どきどきわくわくしている様がふつうに伝わってくる。
ところが途中から、その雰囲気は変わってくる。
「丸っこくて愛らしい」存在だったのが「丸っこいのに突き刺すように尖っている」存在になっていく。
まわりの誰も信じられない
ドキュメント映画でも証言があった。
最初のころは、みんな仲良くやっていたのだが、2016年11月の『二人セゾン』くらいから変わってきて、2017年の『不協和音』で決定的に違っていった。そう振り返っていた。
『不協和音』という曲は、まわりに誰も味方がいないなか、理不尽なことにたった一人で抵抗しようとする「僕」の歌である。
「僕はいやだ!」と叫ぶセリフが突き刺さるように印象的である。
「仲間からも撃たれるとは思わなかった」という歌詞もあるように、まわりの誰もを信じられない状況を歌っている。すべてのものと敵対しても、信じることのために妥協しないという決意の歌である。