世界一高い日本のビールの税率、今月からどう変わるのか?
2023年と2026年にも税率改定が(本記事は『カラー版 ビールの科学』を一部抜粋・編集したものです)
実は国ごとに異なるビールの定義
ビールは、世界中で愛飲されている最もポピュラーなアルコール飲料です。しかし、意外にもその定義は、国や地域によって大きく異なります。
2018年4月1日に酒税法が改正されるまで、日本の酒税法におけるビールの定義は、簡単にいえば「麦芽、ホップおよび水を原料として発酵させたもので、麦芽の一部を麦・米・トウモロコシ・コーンスターチ等の政令で定められる物品を副原料として、麦芽の量の半分以下で使うことができる」というものでした。

したがって、副原料を麦芽の半分を超えて使用した場合や、ベルギービールのようにチェリーやカシスなどの果実、コリアンダーやオレンジピールのようなスパイス、その他ハーブなどのような、政令で定められていない原料を使用した場合には、日本ではビールと称することはできませんでした。
そのようなお酒は従来、酒税法上では「発泡酒」というカテゴリーの酒類に分類されていました。麦芽や麦を使わない新ジャンルは、俗に「第3のビール」とよばれますが、もちろんこれも、ビールとはいえなかったのです。
新ジャンルは発泡酒に統合
ところが、酒税法の改正によって、2018年4月1日から日本のビールの定義が見直されることになりました(「酒税法等の改正のあらまし」平成29年4月税務署、国税庁ホームページ参照)。
まず、ビールの麦芽比率(ホップおよび水を除いた原料の重量中に、麦芽が占める割合)の下限が、100分の67から100分の50に引き下げられることになりました。次に、使用する麦芽の重量の100分の5の範囲内で使用できる副原料として、「果実(果実を乾燥させ、若しくは煮詰めたもの又は濃縮させた果汁を含む)又はコリアンダーその他財務省で定める香味料」が追加されました。つまり、これまで発泡酒とよばれていたものの一部が、ビールに分類されるようになったわけです。

新たにビールへの使用が認められた副原料は表1のとおりですが、輸入販売されているベルギービールによく使用されているスパイスやハーブに加え、地ビールの一部で使用されている海産物など、多種多様なものが含まれています。この酒税法改正によって、原料の使用量や種類の選択が広がり、ビールとよぶことができる商品カテゴリーが広がることになります。
ビールの定義見直しに合わせて、発泡酒や新ジャンルなどのビールに類似する酒類についても定義が見直されることになりました。ビールの定義は先行して2018年4月1日に変更されましたが、それから5年半後の2023年10月1日からは、新ジャンルはすべて発泡酒に分類されることになります。