2020.10.10
# 北朝鮮

北朝鮮が「ド派手な軍事パレード」で新型ICBMをお披露目する理由

朝鮮労働党創建75周年の今年はどうか
伊藤 孝司 プロフィール

最高指導者3人の肖像画

「金日成主席生誕100周年」という特別な節目の2012年4月にも取材に行った。前年の12月17日に金正日総書記が死去し、新たな最高指導者の下での祝賀行事となった。

北京で乗った高麗航空便では、エコノミークラスでもこれまでにない豪華な機内食が出た。北朝鮮にとって極めて重要な祝賀なのだ。そのため、軍事パレードだけでなくさまざまな祝賀行事が行なわれた。取材が受け入れられた海外メディアは、いつもより多い19ヵ国からの約150人。招待客は、60ヵ国からの約390人だった。

「衛星管制総合指揮所」前の海外メディア(2012年4月11日撮影)

11日に海外メディアは、平壌市郊外にある「衛星管制総合指揮所」へ案内された。宿泊場所として指定された「羊角島(ヤンガクド)ホテル」のロビーで午前7時30分から厳しい荷物検査を受け、2時間待たされて大型バスで指揮所へ向かった。

指揮所の建物は少し古くて2階建ての地味なもので、北朝鮮のどこにでもある事業所と同じ。異なるのは、建物の左右にレーダーが入っていると思われるドームを載せた塔が立っていることだ。

ここは、人工衛星打ち上げ用のロケット発射のための管制施設である。前庭で説明を受けて中へ移動したが、150人がもっとも良い撮影位置を確保するために押すな押すなの大混乱になった。

「衛星管制総合指揮所」の内部(2012年4月11日撮影)

中へ入ると、正面の大型モニターに、発射台へ据え付けたられたロケットのライブ映像が映し出されている。人工衛星「光明星(クァンミョンソン)3」を積んだ「銀河(ウンハ)3」である。その前にはモニターが付いたたくさんの機器が並んでいて、白衣を着た作業員たちが見つめている。

国連安全保障理事国などは、このロケットは米国が名付けたICBM「テポドン2」と同じか改良型で、弾道ミサイル技術を利用したロケットの開発・発射の停止を求めた安保理決議に違反するとして、打ち上げ中止を求めていた。

それに対して北朝鮮は、人工衛星打ち上げは宇宙の平和利用を約束する1966年に国連総会で採択された「宇宙条約」が安保理決議に優先すると反論。「衛星管制総合指揮所」の内部を公開したのは、このロケットが軍事用ではないことを少しでも証明しようとしたのだ。

「銀河3」は13日に打ち上げられたものの、打ち上げ1分後に空中分解。異例にも「朝鮮中央通信」は、その日のうちに失敗を認める声明を発表した。しかし同年12月に、2号機の打ち上げに成功。「NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)」は、人工衛星が軌道に投入されていることを認めた。

「科学技術殿堂」での説明会(2017年8月16日撮影)

なお2017年8月に「科学技術殿堂」において、「国家宇宙開発局」が人工衛星打ち上げロケットの説明会を開いた。大同江の中州であるスク島に2016年に完成したこの施設は、「銀河3」の巨大な模型を中心に造られており、北朝鮮が重視する科学技術に関するさまざまな展示をしている。

その模型を背景に、技術者たちが外国人に対し3時間もかけて詳細な技術的説明を行なった。私が施設の案内員に模型は原寸大なのかと聞くと、「秘密だ!」と真剣になって返してきた。

4月15日、軍事パレードは午前10時を告げる鐘の音から始まった。「1号歓迎曲」の力強い演奏の中、11日に労働党第1書記へ就任したばかりの金正恩氏が登場。何と、約20分間もの演説を行なった。人民生活の向上と共に、核・ミサイル開発を中心とした「先軍」路線を重視する方針を示した。なお、金正恩氏の肉声が伝えられたのはこれが初めてだった。

最高指導者3人の肖像画(2012年4月15日撮影)

この日の午後3時から「人民文化宮殿」で、「100周年記念国際交歓大会」があった。舞台には金日成主席と金正日総書記の巨大な肖像画が置かれていた。さまざまな国からの贈り物の贈呈が行なわれ、そこには金正恩氏の肖像画もあった。

 

この時、歴代の最高指導者3人の肖像画が並んだ。北朝鮮が金正恩体制へと移行したことを示す象徴的な光景だった。

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