2020.10.14
# 商社

バフェットが投資した総合商社、株価は「伊藤忠」が独り勝ちのワケ

バフェットの真意と、進む「体質改善」
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

バフェットの本当の狙いとは

だが、バリュー投資家は、もっとドライな計算をするものだと思う。典型的には、株価のアップサイド(値上がりポテンシャル)より先にダウンサイド(値下がりリスク)を厳しくチェックするし、投資利益についても不確実なものではなく、目に見える手堅いリターンを嗜好する。

例えば、リーマンショック危機では、ウォール街嫌いで知られるバフェット氏が、ウォール街の代表格であるゴールドマンサックス救済に資金を投じたことがあった。その条件を見れば、納得だ。バークシャーハサウェイが購入した50億ドルの優先株には10%の配当が付いており、これだけで、毎年受け取る利子は5億ドル(約500億円)に上った。さらに、追加の50億ドルを市場価格より8%安く購入できるワラント(権利)も付いていた。

 

こうした観点から面白いのは、バークシャーハサウェイが、昨年の9月と今年4月に、6本の「サムライ債」(海外の発行体が日本で発行する円建て債券)を発行し、4300億円を調達したことだ。このニュースが出た時には、すわバフェット氏が「円キャリートレード」(金利の安い円で資金を調達、それをドルなど自国通貨に転換し、自国でより高い利回りで運用)をするのではないかという憶測も流れた。

だが、バークシャーハサウェイは、6月末時点で1460億ドル、日本円で15兆円強にもなるキャッシュを保有する。米国で投資をするのなら、それこそドル資金は唸るほどあるので、わざわざ為替リスクを取って「キャリートレード」をする必要はない。

これを見てなるほど、と思った。商社の高い配当利回りと、サムライ債の金利コストの「サヤ抜き」で当面リターンを稼ぐということなら、とても分かりやすいからだ。

バークシャーハサウェイの格付けは、S&Pで「ダブルA」とトヨタより格上。金利の安い日本での調達コストは、とても安くつく。今回発行した5年、7年、10年、15年、20年、30年ものと期限が異なる6本の社債のうち一番多いのが10年債だが、その表面利率は0.44%。バークシャーが米国で今年発行した10年債の1.85%と比べて、日本の条件はずっとお得だ。6本の加重平均でも調達コストは0.7%程度と見られる。

一方で、発表時点での配当利回りは、三菱商事や住友商事が5%、三井物産が4%を超えていた。5社単純平均でも4.2%程度になる計算だ。0.7%で借りて、4.2%の配当利回りが得られるなら、自己資金を使わずに高い確度で3.5%のスプレッドが得られる。社債を発行した4300億円分の投資だけでも、年間150億円程度の利益につながる。

丸紅と住商は減配をしたが、すでに利益がボトムアウトして今後は減配がないと考えられるのであれば、世界的な超低金利でイールド(利回り)がとりにくい中にあって、非常に手堅い投資だ。低収益がしばらく続く「ダウンサイド」シナリオでも着実にスプレッドを稼ぎ、その上で景気やエネルギー価格が回復すれば、その「アップサイド」を株価上昇で取りに行くということなのだろう。 

また、米国政府が自国企業の中国事業に様々な制約を加える中では、日本の総合商社への投資はアジア・中国圏の成長を取り込むヘッジにもなる。

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