2020.10.14
# 商社

バフェットが投資した総合商社、株価は「伊藤忠」が独り勝ちのワケ

バフェットの真意と、進む「体質改善」
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

資源価格が高騰していた2000年代半ばは、株の人気順位は逆だった。資源事業の比率が相対的に高い三井物産や三菱商事は最高益を叩き出し、市場を大きくアウトパフォームした。伊藤忠も、資源高騰の追い風は受けたのだ。でも、相対的に資源事業の比率が小さく、投資家がセクターの中で商事と物産に偏って投資したため、伊藤忠の株価は大きく遅れを取った。

しかし、世界的に資源価格が下落してからは、資源事業での出遅れが伊藤忠には逆に幸いし、その悪影響が比較的軽微で済んだ。一方で食品事業など地味だが利益に大きなブレのない事業を伸ばしたことが、企業利益の安定性につながった。合コンで最後に笑うのは、意外にも地味なカレ・カノジョかもしれない。

ただ、伊藤忠は中国への投資が大きい。2016年に中国のCITIC(中国中信集団)に6000億程度(資本提携するタイのCPグループと合わせて1兆2000億円程度)を投資している。中国の潜在的な減損リスクには気をつける必要がある。

いずれにしても、総合商社が投資事業の比重を増やしてからは、株価は「ラーメンからミサイル」ではなく、三井物産なら鉄鉱石、三菱商事ならLNG、伊藤忠なら中国、などという具合に、その時点で業績感応度の高い個別事業にセンシティブに動くようになっている。 

 

それでも、商社の近年の体質改善は、数字の上でも明らかだ。

例えば、財務体質。90年代頃までの商社はDE(負債/株主資本)レシオが三井物産や三菱商事でも5〜8倍、伊藤忠や丸紅では10倍を超えるなど、びっくりするくらい借金漬けだった。それが近年では、有利子負債は株主資本の1〜1.6倍程度に抑えられている(とはいえ、純負債が2〜6兆円という規模であることには注意が必要)。

レバレッジが下がったのにむしろROEは改善傾向にあるから、昔と比べると利益率の高いプロジェクトをより吟味して手掛けていることは、数字からも読み取れる。

バークシャーの1500億ドル(約15.6兆円)近い長期投資ポートフォリオの中では、日本の総合商社への投資は、今のところ4%弱に過ぎない(キャッシュと短期国債などを含めた約5400億ドルの中では、1%程度)。でも、これを発表の可能性通りに各社9.9%まで倍近くに増やして、長期投資ポートフォリオの8%程度のポジションにするならば、ちょっと本気度が違ってくる。そこが見ものである。

出張から戻った翌日に次の出張に出かけたり、海外顧客とのやり取りのために連日徹夜したり、家族を残して世界辺境の土地に赴任したりーー。無数の商社マン・ウーマンの涙ぐましい努力が、株価でも報われる日が期待される。

SPONSORED