2020.10.16
# 医療

名医が教える「左右の血圧差」でわかる、心臓病の危ないサイン

世界屈指の心臓外科医が注視
天野 篤 プロフィール

なぜ、そうしたことがわかるのか、仕組みはこうなります。

心臓から全身に血液を送り出す大動脈は、心臓から出てすぐのところで左右それぞれの総頸動脈と鎖骨下動脈に分かれます。分かれた動脈は頭頸部と上半身へ血液を送っていますが、上腕の左右の血管には左右の鎖骨下動脈を通じて血液を届けています。

イラスト=なかじままり

本来であれば、ほぼ同じ血圧となるはずですが、にもかかわらず左右の血圧差があるということは、鎖骨下動脈が左右それぞれの腕に向かう途中のどこかで狭くなっているため、そちら側の下流に当たる上腕部の血圧が低下しているのです。

 

また、先天的に心臓や血管の構造に問題があり、たとえば腕に向かう動脈が本来の場所とは違った少し曲がりくねっているところから出ていたりすると、血圧の左右差が表れるケースもあります。

いずれにせよ、血圧の左右差がある人は、血管になんらかのトラブルを抱えている可能性が高いのです。

左右の血圧差で考えられる病気

上腕で測った血圧の収縮期血圧の左右差がある場合、右が高くて左が低くなるケースがほとんどです。そうした人は大動脈瘤や大動脈弁の病気を抱えているケースが多いといえます。

逆に左が高くて右が低い場合は、ほとんどが動脈硬化です。動脈硬化が進んで血管が狭窄しているところがあるので、血圧の差が生じているケースです。

こうしたさまざまな心臓病のリスクを判定できるため、近年、医療機関では血圧を両腕で計測することが広がってきています。

私が勤務する順天堂医院も、下肢と上肢の血圧比を同時に計測するABI検査を行っています。両上腕、両足首の血圧を測り、血管の閉塞状態や動脈硬化の程度を見るためです。

上腕と下肢の比較もできますし、左右で大きな差が認められた場合は、CT検査をしてより詳しく調べる場合もあります。

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