気温の変化が血圧と心臓に与える影響
また、気温や気圧といった気象環境の変化に対しては、血圧が大きな影響を受けます。血圧が急激に上がったり下がったりすることは心臓に大きな負担をかけるため、さまざまな心臓病のリスク因子になっています。
たとえば、厳しい暑さが続いていたのに急に気温が下がって涼しくなると、われわれの体は血管を収縮させて流れる血液量を減らし、熱を体外に逃がさないようにします。
血管が縮んで細くなると、ポンプの役割がある心臓は大きな力で血液を送り出さなくてはなりません。そのため血圧が上がり、それだけ心臓の負担が増えるのです。
逆に、気温が上がると体温も上昇するため、体温を下げるために血液の循環を促進し、熱を発散させようとします。心臓はフル回転するので、心拍数が増えて負担がかかるのです。
また、体温を調節するために汗をかいて脱水傾向が強くなると血液の量が減ってしまい、少なくなった血液を体全体に送らなければならない心臓は、心拍数を増やします。血栓もできやすくなるため、心筋梗塞や心不全を引き起こしやすくなります。
気温や気圧の急激な変化に対し、体内の状態を一定に保つためのさまざまなシステムが、心臓に負荷をかけてしまうのです。
季節の変わり目の心臓トラブル
実際、季節の変わり目になると、心臓にトラブルを起こした患者さんが増えます。先日も大動脈解離(解離性大動脈瘤)で救急搬送された患者さんの緊急手術を立て続けに2件行いました。
動脈硬化や外傷によって大動脈の一部が膨らんで「こぶ」のようになり、なんの前触れもなく、いきなり血管が裂ける病気です。一度目の発症で亡くなってしまうケースも少なくありません。急激な気温の変化に血圧が上下動し、傷んでいた血管が対応できなかったのでしょう。

ひとり目の患者さんは、会社の重要な会議中に急に症状が出たそうです。気温の変化に加え、非常に緊張する状況がさらに血圧を上昇させたと考えられます。
もうひとりの患者さんは、ゴルフをしている最中に症状が表れたといいます。昔から、大きなプレッシャーがかかる1.5メートル程度のパットを打つときが、心臓に一番よくないといわれています。
呼吸が普段と変わって血圧も一気に上がるため、心臓に負担がかかるのです。