子どものケアは親のケアから
子どもに十分なケアができなかった親は、自身のこともケアできていないことが多いので、親をケアすることで、親が子どもをもっとケアできるようになる。最初に「親もケアする意思がある」ことが相手に伝わることが重要であると職員は言う。
「お子さんはうちにいます。お子さんはあまり元気ではありません。難しい状況なのだということがわかりました。ご両親にとっても同じだと思います。大変だったでしょう。子どもと家に帰れるためにどうすればいいか一緒に考えましょう」と伝えると、90%の親は数分後か翌朝には来て子どもがシェルターに宿泊することも了承すると言う。
残りの9%も話し合いをするとほとんどは子どもがシェルターに残ることを認める。それでも認めない1%については親子間のコミュニケーションに誤解があった場合で誤解が解けると解決する。
ほとんどの親は「ありがとう」「聞いてもらえてよかった」「初めて話を聞いてもらえた」と言うと職員は微笑む。
子どもが母親と話し合えないときは、母親自身も自分の母親と話し合えない関係性だったことが多いと考えるので、「お母さんは辛い経験をされたのですね、小さい時、若い時、苦しかったのですね」と心理士が声をかける。
手に負えないと子どもを彼氏の家に泊めたままにする、どこにいるかわからなくても放置するなどの状況はこのケースが多いので、まず子どもを安全な場所で過ごさせた上で話し合いをする。
親自身にアルコール依存や借金や売春などの問題があって、それを問題だと思っていないとしたら、話し合って状況を解決することは難しい。自身に解決していない苦しみがあるということなので、より一層親のケアに力を入れる。
「一番いけないのは親をシャットアウトすることです」とシェルターの職員は言う。
子どもに会えなくても親はいつでも来てエデュケーターと話をすることができる。
誰が相手であっても、言葉が通じなくても、人種も国籍も文化も違っても、特殊な宗教を信じていても、話すこと、対話を築くことは可能であると職員たちは今は確信しているという。
なぜなら、親は皆「子どもを危険な状態に置くよりも話し合って解決の方法を探したい」と望んでいることは共通していて、誰でも自分の子どもに悪いことは起きてほしくないし辛い経験をしてほしくないと思っているからだ。
子どもを助けたいと思っていることは親も同じなので「親と子ども両方のためである」と伝われば反対されることはないと言う。若者も親に辛い思いをさせようとは思っていないので、妥協点は見つかるのだ。