2020.11.03
# 教育

「神戸教員いじめ・暴行事件」を引き起こした「職員室カースト」の実態

報告書からわかった、その構造
いじめ、不登校、保護者との軋轢、長時間労働、新型コロナの影響……。教育現場ではたらく人のストレスとプレッシャーは年々、増すばかり。こうした困難を打開するヒントを与えてくれるのは、著書『いい教師の条件』を上梓した諸富祥彦氏だ。昨年、世間を騒がせた神戸・東須磨小学校の「教員いじめ・暴行事件」。なぜこのような凄惨な事件が起きたのか? 現場に精通した諸富氏が鋭く分析する。

きわ立つ加害教員の残酷ぶり

神戸市立東須磨小学校で、新卒3年目25歳(当時)の男性教員が同僚の教員4人から、いじめや暴行を受けていた事件がありました。

Photo by iStock

2019年10月に発覚したこの事件では、被害に遭った教員が、激辛カレーを無理やり食べさせられ、羽交い絞めにされ、目にこすりつけられる動画が繰り返しテレビで流されました。その衝撃的な場面とともに、東須磨小の教員間のいじめ事件を記憶している方は多いのではないでしょうか。

事件の発覚後、弁護士による外部の調査委員会が設置され、2020年2月には、加害教員4人による125項目にも及ぶハラスメント行為が列挙された報告書が公表されました(事件発覚は2019年でしたが、加害行為は被害教員が新卒で配属された2017年から始まっていました)。

被害者は激辛カレーを強要された男性教員だけでなく、20歳代の男性教員1人と女性教員2人も含め、計4人の被害が調査対象になっていました。125項目のハラスメント行為というのは、加害者4人が行い、被害者4人が受けたものの総計です。

加害者4人の教員のうち、加害行為が最もひどかったのは、30歳代の男性教員Aです。78項目ものいじめ行為に加担していました。

以下は、A教員が被害教員に行った加害行為です(報告書より引用)。

〈車による送迎を求め、被害教員が遅れたときに「はよせいやハゲ、ボケ」と言ったり、車の部品を叩いたりした〉

〈バーベキューをしたときに、被害教員に対し、激辛のソースを飲ませた〉

〈運動会の準備中に、金槌で釘を打っている時に、わざと被害教員の指を金槌で打った〉

〈被害教員が所有する車両の屋根の上に乗り、加えて、同車両を蹴った〉

 

〈模造紙の芯で振り回し、被害教員の尻を3回程度、打ち付けた。その結果、あざ、みみず腫れができた〉

〈養生テープで拘束して放置した〉

〈熱湯入りのやかんを被害教員の顔に近づけた〉

いずれも啞然とするほど悪質で、許しがたい行為です。加害者も被害者も複数名います。

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