2020.11.03
# 教育

「神戸教員いじめ・暴行事件」を引き起こした「職員室カースト」の実態

報告書からわかった、その構造
諸富 祥彦 プロフィール

「特殊な事例」で片づけるな

しかし、この事件には、「ひとりの異常な教師が犯した異常な事例」で片づけてしまうことができない側面があります。

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この事件には、多くの学校の教員集団の中で生じやすい「歪み」が増幅された形で現れています。つまりこの事件は、決して「特殊な事例」で片づけていいものではなく、「教員集団の人間関係」でどんなことが生じやすいかを考える上で極めて重要な、「ある種の普遍性をもつ事件」であると考えられるのです。

重要なのは、この行為が「教員集団の人間関係の歪み」の中で生まれたことです。

以下に被害者、加害者を整理して記します(アルファベットによる呼称は報告書に準じています)。

【被害者】
・被害教員 20代男性(激辛カレーを強要された)
・X 20代男性
・Y 20代女性
・Z 20代女性
【加害者】
・A 30代男性
・B 30代男性
・C 30代男性
・D 40代女性

調査委員会は「加害教員らはいずれも、被害教員よりも年長者かつ先輩であり、教員歴も長く、指導的立場」にあり、「優越的な関係を背景とした言動」であるとし、ハラスメントとして認定しました。加害行為125項目には、いじめからセクハラ、犯罪行為までも含まれ、それらを含めて広義で「ハラスメント」とみなされたのです。

 

東須磨小の教員数は、「30人強」(神戸新聞 2019年10月4日)なので、職員室は学級集団と同じくらいの人数です。そのうち4人が加害者で4人が被害者です。職員室の中でいじめる側といじめられる側が4人グループで存在しています。これは学級集団で生じる子ども同士のいじめとまさに同形です。

さらに悪質なことに、「東須磨小「悪魔の職員室」神戸イジメ教師が後輩男女教諭に性行為を強要した」(「週刊文春」2019年10月24日号)という報道もありました。まさかと目を疑う見出しですが、ハラスメント行為が列挙された報告書には、伏せ字ばかりですが、強要した行為を思わせるくだりも記されていました。

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