「子どものいじめ」と同じ構造
特に私が注目するのは、加害者グループ中で唯一の女性で最年長(40代)だったD教員です。

40代の女性教員で、学校で最も実質的な影響力を発揮していたDが背景にいて、30代の男性教員3人に、20代の教員4人をいじめさせていたのです。D教員は2017年に当時の校長が呼び寄せたとされています。校長のお気に入りだったのでしょう。
私は、加害者グループ4人の中でもDが実質的に果たした部分が大きいと考えています。
Dについてはこんな報道があります。
「仕事はテキパキとできるのですが、その分、要領がよくない同僚を小バカにする面は、あったかもしれません。児童に対してもえこひいきが激しく、暴言を吐かれたり、胸倉を摑まれたりした子がいたようです」(「週刊文春」2019年10月17日号)。
加害者の30代男性教員3人が職員室の中で若手教員への力をもっていったのも、校長のお気に入りで仕事がテキパキとできるDという「後ろ盾」があってのことだったのでしょう。
事件発覚時の東須磨小の校長は、2018年まで教頭だったそうです。同じ職員室にいた教頭が、何が起きていたのか気づかなかったとは考えづらいです。学級のいじめと同じ「同調圧力」が働いていて、管理職の感覚もマヒしてしまっていたのです。
管理職が事なかれ主義者だと、職員室内の別の誰かが実質的なボスとなり、幅を利かせるようになりがちです。これも、事なかれ主義の学級担任のクラスで、「力があるとみなされている、クラスの中心的な位置にいる子ども」が、いじめ集団のリーダーになりがちなのと同じです。
子どもたちの間にはびこる「カースト」が職員室でも存在していたのです。
現に調査報告書には、次のように記されています。
〈被害教員は、A教員からのからかいに反応しないと、「はあ? おもんな、しょうもな」と小声で言われて冷たくされ、A教員に嫌われると本小学校で仕事ができなくなる、という恐怖があったという〉
神戸市東須磨小の教員間いじめ・暴行事件は、子ども同士の「いじめ」と同じ構造の上に成り立っていたといえます。