ドラマで描かれた「女性だけじゃない」問題意識

子宮頸がんが予防できるHPVワクチンは女性のため、女性だけが打てばいいワクチンと思われがちです。男性のワクチン接種によって、女性へのリスクも下げることができることはわかっていても、それを知らない人は日本だけでなく、韓国でも少なくありません。日本よりHPVワクチンの接種が進んでいる韓国でも、男性が接種するメリットはまだまだ知られていないのが現状

前にも少し触れましたが、ドラマ『青春の記録』では、HPVワクチン接種を彼女から勧めらる男性(ジヌ)が出てきます。彼は最初、「どうして俺が?子宮ないのに?」と戸惑いをみせています。そんな彼に彼女は、男性も接種することの意味を話すのです。このシーン放映後、SNSには「ドラマがいい影響を与えている」「男性の接種も必要なことがわかった」「あまりに無知だった」といった書き込みが数多く上がりました。HPVワクチンや男性が接種するメリットへの理解が広がったと言われているのです。

韓国で人気トップ3に入る若手俳優のパク・ボゴムらがHPVワクチンを接種することで若い世代の関心を持つ効果は大きい。写真/Getty Images

でも、だからと言って、すぐにHPVワクチンが広がるわけではありません。韓国ではHPVワクチン接種の価格が問題になっています。HPVワクチンの必要性は理解しても、12歳の無償年齢を過ぎてしまうと、日本と同様で有料接種になります。韓国の場合、ドラマと同じ形で9価ワクチンを3回打つとなると、トータルで5万ウォン前後(日本円で4万6000円ぐらい)かかります(ちなみに日本も7月に9価ワクチンが承認され、1回の価格は3~3.5万。3回だと9~10万と韓国よりも高額なのです)

若者の就職難が続く韓国で、この値段を出して接種できる人は正直少ないことが想像できます。お金がある人はワクチンが受けられ、お金がない人は受けられないという現状に異論を唱える人も多く、韓国政府に9価ワクチンを無償で提供してほしいという嘆願書が届いているというニュース報道も上がってきています。

9価ワクチンの『ガーダシル9』。今回のドラマ以外にもメディアも積極的に接種をアプローチしている。画像/韓国MSD、HPより