そこで、大阪市が全戸配布した「特別区設置協定書」説明パンフレット(以下、「説明パンフ」とします)にどのようなカラクリがあるのかご紹介します。

私が参加した住民説明会でも、会場からは「特別区になれば財源がなくなり、住民サービスが切り捨てられるのではないのか」という不安の質問が多く出されました。
大阪市を消滅させ4つの特別区にする分割コストがかかるのに、国からの地方交付税交付金は増えません。さらに大阪市の財源の約2000億円が大阪府に取られてしまい、住民サービスが維持できる保証はありません。
こうした疑問に、大阪市(副首都推進局)は「財政シミュレーション」(写真:パンフレットP.33)で、右肩上がりのプラス収支になり、特別区がお金を使える額(財源活用可能額)が増えるというグラフを示し、「特別区の財政運営は可能です」との説明。これを何度も繰り返していました。

どうやらこの「33ページ」が、大阪市の説明会での鉄板ネタ、最後のオチになっているようです。
その説明会で、私が「ちょっと待ってくださいよ!」と立ち上がって発言をおこなったキッカケは、こんなやり取りでした。
(略)
大阪都構想によって成長の好循環をうむ、だから税収がふえるということで黒字になる、そこの財政シミュレーションのなかでは分割コストを計算している、そういう意味ですか?
大阪市の担当者の反応:(否定せず、うなづく様子)
ちょちょちょちょ、ちょい、ちょい。待て!
なにを大阪市の担当、うなづいて次行こうとしてんねん!(笑)
ビックリするがな。
みなさんも、このグラフと大阪市の説明を聞いていたら「都構想で大阪が成長するから、財政も大丈夫なんやな」って思うでしょ?
以下、特別区の「財政シミュレーション」(「p.33のグラフ」)が、右肩上がりのプラス収支になる成分を分解して、その成分には「都構想の好循環による成長」は含まれていないことを明らかにします。そして、「なぜ含まれていないのか」も、明らかにします。
実際には、特別区の財政は火の車になる可能性が非常に高い。これはやばいです。